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■普通教室のICT環境整備でデジタルコンテンツ活用〜小学校・中学校 拡がる

ICT活用で「国語力育む」研究テーマに
                   日野市立日野第三小学校〜小学校国語

 東京都日野市では今年度、国語教育の充実を目的に、光村国語デジタル教科書を全中学校及びモデル校など一部の小学校に導入した。日野市立日野第三小学校(京極澄子学校長)での今年度の研究テーマは「国語科におけるICT活用」。「国語」と「ICT」を第一義に結びつけた研究テーマは全国的にも珍しい。デジタル教科書を活用開始してほぼ1か月という西田瑞子教諭(2年1組担任)の授業を取材した。

 黒板上のスクリーンにデジタル教科書の本文を拡大投影

「ホンソメワケベラの体の特徴がわかる言葉に鉛筆で線を引きましょう」
  西田先生の指示で、教科書に線を引き始める子どもたち。その後、黒板上のスクリーンにデジタル教科書の本文を拡大投影し、「体の特徴がわかる言葉」について教師が線を引きながら、全員で確認していく。

  今日の授業は、説明文「サンゴの海の生きものたち」(光村図書2年上)。「ホンソメワケベラ」という魚と他の魚との共生関係を読みとるのが本時の目標だ。授業の最初にはデジタル教科書の「朗読」機能を活用して一斉読み。その後、各自で音読練習をすると、子どもたちの呼吸や間の取り方に、「朗読」とあわせて音読をした影響が表れていることがよくわかる。

  授業の最後にはデジタル教科書の参考資料にある動画で、小さな魚であるホンソメワケベラが大きな魚の口の中に自分から入り、口の中に付いた虫を食べて掃除している様子を確認。子どもたちは本文の内容を具体的に確認できたことで、「すごい」と感動の声を上げた。


西田瑞子教諭(2年1組担任)の授業 デジタル教科書はこれまで知らなかったという西田先生。単元全体で「デジタル教科書」を活用したのは、今回が初。「とにかくやってみよう」という思いからのスタートだった。

  「子どもの教科書と同じものが前に提示できる点はとても良いですね。資料映像などにも良い素材が入っており、ITが得意な人だけが使うものではなく、誰にでも使いやすいものになっていると感じました」

  1時間目の導入には、デジタル教科書の参考資料にある動画を視聴して「サンゴの海の様子」を全員で観賞した。子どもたちから「わー、キレイ」と歓声が上がり、海の世界に入り込んでから教材文に取り組むことができたという。

  「他の学校ではデジタル教科書をどのように使っているのか見たことがないのですが、様々な可能性があると思います。教材文の読みとりの後にデジタル教科書の映像を見せることで感動を生むこともねらえます。『デジタル教科書』『板書』『短冊』をうまく切り替えて、デジタル教科書の本文や挿絵の拡大機能も活用しつつ、最後に板書を見て学習を振り返ることができるよう、授業を作っていきたい」と述べた。

  さらに、デジタル教科書の効果については「中には45分間、気力や集中力が続かない子もいます。彼らをデジタル教科書が助けてくれる、と感じました。本文を拡大してキーワードを全員で確認したり、挿絵を拡大して考えさせたり、参考資料の動画を見せるなどの活動をはさむことで、改めて集中させることができます」と述べた。


◇  ◇ 

授業後の校内研究会では、各教員がノートPCを所持し、グループウェアを使って「ICT活用が効果的であったかどうか」を視点に意見を記入、それらの意見を元に協議した。「写真を拡大することで、みんなで考えを共有することができる」「資料映像の視聴には、驚きと感動があった。最後に使うことで効果が上がった」「今どこをやっているのかがすぐに分かるので、子どもたちが落ち着いて取り組めた」「自作教材のワークシートに取り組むときにはワークシートを拡大提示する、という切り替えが良かった」という意見が出された。

  日野市教委の五十嵐俊子氏(ICT活用教育推進室室長・統括指導主事)は、「良い素材をどう調理するかは先生の腕次第」と述べた。

五十嵐俊子氏(ICT活用教育推進室室長・統括指導主事) 京極校長は、デジタル教科書について「視覚的な要素がないと集中できない子にとって大変効果的。同時に、教科書がそのまま再現されているので、確実に画像から教科書に戻れる点がいい」と評価した。
  さらに今日の授業について「当初は、まずは使えるようになればいい、との思いで始めましたが、今日の授業を見て、ITが不得意だったり、経験が少なかったりする先生にも、もっとゴールを高くしてもいい、むしろそうしたほうが良い、と感じました。使うことではなく授業での効果的な活用をゴールにすることが、先生自身のモチベーションアップにつながります。今後の研究に確かな手応えを感じました」と語る。