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Information and Communication Technology

TOP特集ICT環境整備

■「話す力」「聞く力」「発表力」伸ばす・定着するICT活用で
     生徒の「気持ち」開く授業〜東京都台東区立御徒町台東中学校

デジタル教科書が集中力を高める

甲斐利恵子先生 東京都台東区立御徒町台東中学校(関本惠一校長)では「総合的な学習の時間」で「伝統文化」についての発表会を予定している。

それに向け、1年3組(38名)で国語科の「話す・聞く」の学習を行った。台東区ではすべての中学校に電子情報ボードが設置されたこともあり、それを活用して「光村国語デジタル教科書」中学校版「話す・聞く」編などのデジタルコンテンツを活かした国語の授業が行われた。

授業者である甲斐利恵子先生は、「『心』が開いていないと『言葉』が出てこない。『言葉』が出ないと、『話す・聞く』の授業は成立しにくい」と言う。ICTを活用しながら、生徒たちが「心を開く」「心が触れ合う」瞬間を大切にする授業を展開した。

 電子情報ボードには、生徒がフリップを提示して発表している映像が映し出されている。「ここ、見てごらん。この指は何をしていると思う?」と生徒らに注目を促す甲斐先生。フリップを持って説明する際「説明している内容について指し示しながら発表する」ことの効果について、生徒らと視覚的に確認する。

  これは、「国語デジタル教科書」「話す・聞く」編に収録された「動画資料」を活用した1シーンだ。

  甲斐先生はさらにデジタル教科書の2年生分野から「提案のしかたを工夫しよう―プレゼンテーション」のページを開く。「話す・聞く」編は中学校1年から3年分野まで収録されている。必要に応じて中学校1年生時でも2年生用教科書コンテンツから先取りして学んだり、前年度に学習した事項にもどって「振り返り」に活用したりすることができる。

  デジタル教科書の「参考資料」をクリックすると「動画資料」が起動、プレゼンテーションの模範映像が流れる。それを見ながら「わかりやすい発表の際に必要なこと」が何かを生徒らと発見、ひとつひとつ確認していく。生徒らからは「ゆっくり、はっきり声を出している」「間をとっている」「皆のほうを向いている」など、具体的な「気づき」が上がる。

  自分たちの「発表」の場を目前に控えているため、強力な「動機づけ」がある。そのうえ、デジタル教科書によって視覚化されることで、発表の際に気をつけなければならない点について具体的なイメージをつかみやすいようだ。

  「自分たちのビデオも見たい」と生徒たちから声が上がる。4月に行った「朗読発表会」の映像(甲斐先生撮影)だ。入学当初、自分たちはどんな発表をしていたのか、何を学んだのかをここで確認・理解していく。「自分たちの発表している様子も実際に見てみたい」意欲は、本時の課題である「発表の流れをつかむ」「発表会の絵コンテを書く」活動に直接結びつく。

  その後、「デジタル教科書」の本文を示しつつ、甲斐先生がポイントを説明、画面に線を引きながら皆で重要点を確認する。和やかな雰囲気の中、生徒らの生き生きとした表情が印象的な授業となった。

 甲斐先生は「デジタル教科書の『動画資料』では、内容にあった資料映像をピンポイントで見せることができるので、イメージしやすく、『発表のコツ』などに気付かせることができました。映像がきっかけとなって過去の学習についても振り返りやすいため、定着を図ったり、自分の成長を確認することができますね」と述べる。

  「文字情報中心ですと、『振り返り』もぼんやりしたものになりがち。そんなときに、デジタル教科書でさっと以前の学習内容に戻ったり、映像などで記憶を刺激したりするとスムーズにフィードバックされ、『定着』していくんです」

  前回学んだことが今回このような形で生きてくるのだ、という「実感」を持たせることが国語の授業では特に求められている、と述べる。

  「中学生になると、楽しい≠セけでは満足しません。自分を伸ばしてくれる人、伸びた自分を認めてくれる人を求めています。特に近年、その傾向が強く見られるようになりました」

  だからこそ生徒たちと目が合う瞬間はとても大事、と甲斐先生。「でも、限られた1時間の中で視線の合う子どもたちはごくわずか。それが、デジタル教科書を活用することで生徒たちひとりひとりの表情を見る機会が多くなり、授業中ごく自然に視線があうシーンが増えていきます」

  そんな貴重な瞬間″りにも国語デジタル教科書は有効、と甲斐先生。「授業は生徒と教師のコミュニケーションの場。視線が合う時間が増えるのは授業中のコミュニケーションを深めるために役立ちます」と語る。