東京都が平成9年度から10年計画で進めている都立高校改革。進学重視型単位制高校や中高一貫高校など、様々な取組みが模索されている中で、自分の興味・関心に応じて幅広く学ぶことができる総合学科高校の取り組みが注目される。平成19年度開講予定の東京都立葛飾総合高等学校(仮称)キャリアカウンセラーの杉森共和教諭に話を聞いた。
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■ キャリア教育を教育活動の柱の一つとして据える葛飾総合高校では、1年次から3年次まで『キャリア・コア・タイム』と称した週に2時間のキャリアについて考えるプログラムを組む予定だ。
「1年次に将来設計や情報活用能力など基礎的なことを身につけ、2年次には『奉仕』(平成19年度より都立高校で必修化)を中心に自分のやりたいことを見つめ、3年次には課題研究を通して、生徒に興味・関心を追及してもらいます。また各科目で『科目とキャリア』という時間を設けて、社会の中でその科目がどのように役立てられているのか説明することも考えています」
国語の教員である杉森先生は、前任校でコミュニケーションの授業を立ち上げ、生徒の対人関係能力を育成し、キャリア教育につなげてきた。
葛飾総合高校でも、この実践を踏まえて、コミュニケーション能力を育てようとしている。例えば、多(話し手)対1(聞き手)の授業。班ごとに一人ずつ司会をして、ゲームを運営し班員の感想を聞き出す。ゲームのネタは複数用意され全員が司会を体験する。ゲームの次はいくつかの硬いテーマで話し合い、やはり全員が司会をする。
「司会は聞き手なんです。メンバーが一度に話してもわからないので、順番を決めたり、話を促したりと、コミュニケーション能力が試されます。聴き出すことで話が深まることも体験できます」
司会は上手な聞き手であることに気付き、人前で話すことに慣れていく工夫がなされている。
「生徒が企画して運営することは、総合学科高校の命だと思います。自分達で課題を設定して失敗しながらクリアしていくことが大切。コミュニケーション力を高めた後には企画づくりを実践させることも重要です」
また人間関係が密接な下町に設置される同校では、様々な科目で地域の教育力を取り込んでいけるよう、現在、産業界のネットワークや地域の人々を巻き込んだ『葛飾教育サポートシステム』を組織。来年度の開設に向けて積極的な取組みを続けている。
「生徒にとって最初の社会体験は学校の周りの地域です。高校生が社会を知るには実際に体験しないとわかりません。またキャリア教育は教科の授業の中でも少しの工夫で広がるもの。授業のなかで『学び』への動機付けを行い、生徒に学ぶことの楽しさを感じてもらいたい。本校で自らの研究内容と『学び』への熱意を持って、大学やその後のキャリアの中にしっかり『学び』を据えていって欲しいですね」
(聞き手 吉木孝光)
【2006年8月5日号】