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キャリア教育どう取り組む -14-
”社会人基礎力”小・中・高でも育成を
−経済産業省産業人材参事官室課長補佐 能村幸輝氏

 経済産業省が3か年計画で平成17年度から進めている「地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト」は、学校・地域・地元産業界を有機的に結ぶモデル事業だ。今年2月には昨年度の取り組みについて参加者にアンケートを実施(回答約2万件)、成果と課題を取りまとめた。同省経済産業政策局産業人材参事官室・能村幸輝氏に話を聞いた。

 民間主体の経験やアイディアを活かし、生徒らに働くことの面白さや社会で必要な基礎的な能力を体系的に理解・体験してもらうため、平成17年度から開始された同事業。地域の教育委員会・PTA等との連携や、地元産業界の協力のもと、同省が公募・選定委託した民間コーディネーター(NPO・民間企業等)が実施校(小・中・高)へプログラムを提供する。「総合的な学習の時間」等のなかで、3ヶ月から半年にわたり約20時間程度の授業が実施され、昨年は、25件の事業で191校・約2万8300人が参加。新たに4件が追加された今年度は、実施対象が約300校・約3万5000人へと発展した。

 「従来の取組みの多くが職場体験を行なうだけのイベント型だったが、その取り組みによって参加者がどのように変わったのか、成果と課題を確認する必要があった」

 そこで同省は、対象者や関係者にアンケートを行い、集約した声をWeb上で公開している。
 拾い上げた声からは『様々な仕事があることが分かった』『学校の勉強と仕事等の関係が分かった』等の成果を確認できた。一方で、打合せ時間の確保や実施校・産業界、行政の役割の明確化、保護者等への情報発信など、課題も見えてきた。

 「受講した子どもの気付きでは、『考える』という要素が『チームワーク』や『積極性』と比べ、とても低かった。また『学校の勉強に前向きに取り組むようになった』と応えた割合も3割程度と総じて低い。これらが高くならないと『キャリア教育ではなく基礎学力を高めなければならない』という従来通りの二元論になってしまう。だが、知識を実社会で活かすためには『社会人基礎力』(前に踏み出す力―アクション/考え抜く力―シンキング/チームで働く力―チームワーク)が不可欠。その育成のためにも基礎と総合の両面を備えた指導が必要だ」

 同事業では、『事前学習↓体験↓事後学習』という体系的なカリキュラムを、正課の授業と関連づけて実施することにより、他の科目の学ぶ楽しさや意欲を高めることを目指している。

 「昨年の実施地域での広がりをより広く伝えるため、関係者間のネットワークをどのように構築するのか。事業の自立化のため、今年は仕組みづくりにも力をいれたい」

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 参考URL1
http://www.meti.go.jp/press/20060519007/saitaku-kekka-set.pdf

 参考URL2
http://www.career-edu.jp

(聞き手 吉木孝光)

【2006年7月8日号】


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