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■社会経験のある教員を養成
「教師の方々は教える能力に長けているが、社会の変化に対応できる人は多いとは言えない。様々な問題を自ら考え、どのように解決するか、現代の教師には『問題解決力』が必要である」。
開校を控えた日本教育大学院大学は、教員免許を所持する社会経験者を対象とした、これまでにない大学院大学だ。現代求められる教員を養成するため、同校では「問題解決力」のほか、「キャリア開発力」「対人コミュニケーション力」の育成を柱に据えている。
「産業界に通じるスキルを教育界へどのように落とし込むか。文部科学省の方からも、産業界の経験を学校教育の場に活かすよう言われている。そのための取組みの一つとしてビジネスコンサルタントなども講師に招いている」。
大学教員ばかりでなく高校で働いていた先生やビジネスの場で活躍する人など、幅広く講師を揃えているのが同校の特徴の一つ。そこで論理思考やプレゼンテーション、ディベートなどの専門家である産業界出身講師が、「対人コミュニケーション力」を育む。また同校では、生徒が自らキャリアについて考えるカリキュラムを組むなど、「キャリア開発力」を培う様々な施策が考えられている。
「4月には入学者全員を集めて合宿を行い『将来どのような先生になりたいのか』(キャリア開発)、『この2年間でどのような勉強をしたいのか、自分の夢を元にプランを立てましょう』(キャリアプランの設計)と問いかけていく」。
カリキュラムには「教職動機付け講義」が授業として盛り込まれており、生徒は入学当初の合宿だけでなく、授業を通して自己のキャリアについて考えることになる。
「もちろん、教師に求められる能力は他にも色々とあるが、この3つが大きな柱だと考えている。キャリア教育は教育にとって重要なもので、それによって学びの動機付けがなされ、欠かせないもの。2年後、入学者全員が卒業した暁には、経験を生かしてキャリアカウンセラーとしても最高のスキルを合わせ持った先生になって欲しい」と高橋氏は語る。
教科に関係なく学ぶ総合ゼミ(1年次)では、どのような先生になりたいかを考えながら、皆の前で授業を実践。2年次に用意されている教科ゼミでは、徹底的に教科について教えられる先生を養成、長期の実習も行う。
「本校は単に教えるだけでなく、将来は日本の教育に対して新しい指針を示せるような、日本のこれからの教育を考える研究所を目指したい」。
同大学設置主体で、高橋氏がコンサルタントを務める学習塾「栄光ゼミナール」では、昨年から高校生(希望者)を対象に自分のキャリアについて考えるプログラムが始まり、父兄に好評を得ているという。進学率を求められる学習塾においても注目されるキャリア教育。学校教育での実践にも期待がかかる。
【2006年2月4日号】