■育成に努めるも
採用枠少なく
平成15年度から全国の普通科高校で「情報」が2単位必履修され、昨年度までにすべての高校で授業が行われたことになる。「情報」担当教員は、15年度からの新教育課程の実施に先立ち、3年間で数学、理科、家庭科などの現職教諭を対象にした免許講習会で9000人が養成されたが、都道府県により配置人数がまちまちで、一人しか配置されていない学校、非常勤講師だけを置いている高校もある。一方、情報科教員の新規採用を実施している県は少なく、大学で情報科教員になろうと学んでも就職先の学校がない、といった実態がある。3月7日から10日にかけて、東京の工学院大学新宿キャンパスで情報処理学会の第68回全国大会が開催。その中で教育シンポジウム「高校の『情報科』教員養成における課題」が行われ、大学教員、高校教員、大学新卒者、企業による報告・意見交換が行われた。
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東京農工大学で同大の大学入試に教科「情報」を取り入れるための試行試験実施などに積極的に関わってきた辰己丈夫氏は、「理工系大学では複数教科の教員免許をほとんど取れないが、採用側の都道府県教委は、理科、数学など複数教科の免許を持っている人を歓迎する」と「情報」の新規採用に関する問題点を指摘する。
長野大学で高校情報科教職課程を担当し、「情報科教育法」などを教えている和田勉氏は、「新設教科だから、新設しばらくは教員の需要が多いはず」との思いが裏切られ、情報科教員の新規採用が非常に少なく「学生に適切な進路を用意してやれない」と嘆く。厳しく教え毎年1人から3人に単位を出しても教職に就けない現状がある。
情報科の免許だけで受けられる都道府県は、埼玉、静岡、新潟、青森、三重、大阪の6県のようで、東京、千葉、茨城は他教科の免許がないと受けられないと報告。
長野大学で情報科教員となることを夢見て免許を取得、現在は信州大学大学院で教育学を学んでいる下村幸子氏は、「免許所有者は増えているが、採用数は増えていない」なんとかして=Aと声を高める。大学院に行ったのは、教員採用試験を地元で受けようとしたが、募集がなく断念してのこと。
教育実習の受け入れ先を見つけるにも非常に困難で、大学の先生の紹介でやっと慶応義塾湘南藤沢中・高等部で実習することができた。そこでの体験はすばらしく、Excelを教えるにしてもまず、紙を配り説明する。グループワークも良く行われ、議論の中で1つの答えを出していた。「PCは便利な道具に過ぎない」ことを実感したと教職への想いを語る。
現職教員等講習会で免許を取得し、東京都立町田高校で情報科を教えている小原格氏は、情報科を取り巻く現状と教科としての今後の課題を語った。一般教員の情報科に対する認知度はまだ、「プログラミングをしている」「重要教科ではないと思っている」といった状況であり、「情報科の教員を入れるには、他教科の教員を減らさなければならない」といった学校の制度的問題も指摘。教科としての課題について、「大学は(情報科の教育に)何を望んでいるのか」という迷い、専門的な体系付けと科目の整理の必要性を示した。企業の立場として参加した内田洋行の大久保昇氏は、情報科目の「大学入試への採用」を提案した。
【2006年4月8日号】