2005年4月から個人情報保護法が施行され、情報漏えいに対する対策が一層求められるようになってきた。自治体では、個人情報保護条例を制定し、情報漏えいに対して、罰金を科したり懲戒処分を行うケースもある。
◇ ◇
千葉県教育委員会は、教職員向けリーフレット「信頼される教職員―不祥事防止のために―」を作成、不祥事の防止に努めるとともに、昨年12月「懲戒処分の指針」を制定。第8号「個人情報の紛失、盗難」…「児童、生徒等に係る重要な個人情報を、重大な過失により、紛失し又は盗難に遭った職員は、減給又は戒告とする。」と明記された。同指針は県立学校職員だけでなく、県費負担職員である市町村立小中学校の大半の教員が対象になる。
千葉県の懲戒処分件数は平成17年度16件。うち、2件が情報漏えい関係で戒告処分などにされた。
〈事例1―千葉県〉
H市のG教員は金曜日の勤務終了後、保護者との関係で悩みを抱えており、学年主任に相談にのってもらうため、学校近くのファミリーレストランに自家用車を駐車し、1時間ほど話を聞いてもらった。帰宅しようと駐車場に戻ったところ、車の窓ガラスが割られ、個人所有のノートパソコンが盗まれていた。パソコンには、児童のテストの点数と通知表の所見の下書きが入力されていた。
〈事例2―札幌市〉
20代の高校教員が昨年12月、自家用車を札幌市内のスキー場に駐車していたところ、後部座席の下においてあった個人情報が記録された記録媒体(USBフラッシュメモリー)が入っているかばんを盗まれた。記録媒体には、生徒の平成17年度前期成績資料(98名分)が入っていた。戒告処分とされた。
札幌市の懲戒処分件数は平成17年度20件。うち、3件が情報漏えい関係という。情報漏えいの処分内容は16年度まで文書訓告だったものが、17年度から戒告処分に強められている。
文部科学省は毎年12月、「教育職員に係る懲戒処分等の状況について」をまとめている。16年度分が昨年12月に公表されたが、今年12月に公表される上記報告書では、「守秘義務違反」の項目に情報漏えいによる懲戒処分の状況が盛り込まれることになるのではないか、という。
■調査から−個人情報の漏えい原因
58%が盗難、紛失・置忘れ
NPO法人日本ネットワークセキュリティ協会が作成した、個人情報漏えい事例に関する報告書「2004年度情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」によると、平成15年中の「教育・学習支援業」からの漏えい事件数は、調査対象366件(新聞やインターネット上に公開された件数)のうち7%を占めた。個人情報の漏えい原因のうち「盗難」と「紛失・置忘れ」だけで6割近くに達し(図参照)、特に教育・行政関係では、自宅に資料やPCを持ち帰る途中で被害にあう事例が多いと分析している。
同協会は事件・事故ごとに想定損害賠償額を算出しているが、パソコンの盗難により166人分の生徒の成績・保護者氏名など(氏名・住所・電話番号)を漏えいした事故のケースで、想定損害賠償額は一人当たり5万4000円、総額896万4000円に上る。
[関連記事]
・実効あるセキュリティポリシー作成 北区立赤羽台西小(060310)
【2006年3月4日号】