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英語特集

第56回全英連全国大会に望む

全国英語教育研究団体連合会会長 塩崎 勉氏

◆英語教育指導について
 英語教育も10年単位で見ると、大幅に変化している。情報を正確に読み取ることから、発信型の授業に切り替わらなければいけない、と言われてきた。なぜ、これほど長く言われてきたかといえば、現場で教える先生がそういう訓練を受けてこなかったから。時代のニーズに応えられるだけの力量が十分ではなかった。

 最近の若い先生方は随分変わってきて、SpeakingやListeningが年配の先生に比べてかなりできるようになってきた。しかし、じっくりこってり英語で読書をした経験があまりなく、Speakingはできるが内容が骨太ではないという傾向がある。反対に、年配の先生はSpeakingやListeningは苦手だが、Readingについては負けないという強みがある。

◆第56回全英連大会について

 第56回全英連大会は、Global Citizenship(地球市民)を視野に置いた英語教育が主題だ。簡単に言えば発信型の英語教育にもう少し力を入れよう、ということだ。例えば本校には英語を母語としない国の人々、マレーシア、韓国、中国などの方々がよく視察に来られるが、お国なまりの英語でよく話し理解しあえる。世界のあらゆる人々と英語で交流できるという情報発信を視野において、英語教育をすすめたい。

 全英連は中学校部会と高校部会に分かれている。全体会は一緒に行うが、その後中学校、高校、中高合同の各分科会に分かれる。また、1日目に英国のCauldwell氏がPronunciation for  Speaking and Listening≠テーマに講演される。これは、生徒が発音を学習するときに、一つ一つの単語の発音を辞書などで発音記号をもとに覚えていくが、センテンスやパラグラフなど連続した音声になると、その発音が微妙に変化して、聞き取りにくくなる。また、自分でも連続した音声の発音がなかなかできない。その同じ単語の発音の変化を、日本の検定教科書を用いていかに指導していけばいいか、実践を交えて講義していただける。

 その後、高校と中学校の授業実演と協議を行い、中学・高校の先生が双方の校種の授業を見ることで中高連携が進むように意図している。高校は生徒に舞台に上がってもらい授業実践を実際に行い、中学校は今年は授業実践のビデオを見せる。
 校種、学校によって状況が異なるので、分科会では基礎学力をテーマにした研究や、アドバンスト・レベルをテーマにした研究発表などが行われる。

 Cauldwell氏の記念講演には非常に期待しており、毎年、全英連の記念講演と授業実演は、歴史に残るものとして英語関係者から注目されている。その講演や授業実演、分科会の内容を、大会後「大会紀要」(DVD有り)として記録に残し3月に刊行しているが、大会紀要を改めてもう一度読み直してみると、非常に役に立つことがある。

◆教育改革の中での英語教育の成果と課題
 ALTが都立高校に配置され出したのが確か1985年。その後3年以内に全都立高校にALTが配置され、都立高校が皮切りとなり全国に広がっていった。このALT導入がこれまでの最も大きな変化の要因だったと思う。それまでは一部の先生を除き、ネイティブの先生に接する機会は極めて少なく、先生のコミュニケーション能力の向上に与えた好影響は非常に大きい。

 また近年はインターネットで、英国や米国の新聞など英語の情報にふんだんに接することができることも大きな変化である。
 一方で、「コミュニケーション」が重視されるあまり、昔のようにサマセット・モーム、バートランド・ラッセルなど有名な英語の小説や哲学書などこってりした読書体験を、若い先生方があまりしなくなっているという弊害もある。
 受信、発信のバランスの取れた英語教育が必要である。


 

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