日本教育工学会は、文部科学省から委託を受けた「ITを活用した教科指導の改善のための調査研究事業」を実施し、報告書をまとめた。特に各教科の具体的な指導場面におけるIT活用が、児童生徒の学力向上に関連する度合いを調べ、またITを活用した教育の効果を示す134の事例を収集した。調査は県別に無作為抽出し小中高校5000校に調査票を送り、2194校7800人の教員から回答を得た。
まず、ITの使用状況は、小中高校ともに「校務などの事務処理」にITが最も多く使われ(86・2%)、次いで「教材研究」(68・7%)、「授業中の活用」(48・4%)、「家庭・地域との連絡」(19・6%)の順だった。小中高校ともこの順位は変わらず、「授業中の活用」の割合は小学校が最も高く(54・9%)、次いで中学校(42・0%)、高校(38・8%)だった。
また、ITの使用頻度を、「ほぼ毎日」、「1週間に2、3回」、「1週間に1回」、「1か月に1回」、「まったく使用しない」の分類で調べた。すると、「ほぼ毎日」使用している割合は、高校が最も高く(73・4%)、中学校(66・1%)、小学校(51・5%)と続いた。しかし、授業で「ほぼ毎日」ITを使用している割合は小学校が最も低く(2・7%)、児童生徒がITを使用している割合も小学校が最も低かった(1・7%)。
調査では各教科ごとに、観点別に具体的な指導場面を想定してITを取り入れることの効果をそう思うかどうか聞いた。すると、小学校では全教科・すべての項目でIT活用によって学力が向上すると教員は評価していると見て取れた。中学校でも国語の「読む能力」を除いてIT活用の効果を教員が認めていることが分かった。高校でも、国語の一部の項目を除き、全ての項目でIT活用は効果があると教員が判断している。
特にIT活用の効果について高評価の項目は、小学校では社会科(関心・意欲・態度)「社会科の授業で、産業や地理、歴史などについて調べる際に、子どもたちにインターネットを活用させることで、より意欲的に調べるようになると思う」や、理科(知識・理解)「理科の授業で、シミュレーションやアニメーションを活用して提示することで、直接観察できない現象をより理解させることができると思う」。中学校では社会科(関心・意欲・態度)「ITを活用した情報提示や情報検索を取り入れて社会的事象に対する具体的なイメージを喚起することで、興味・関心をより高め、より意欲的に追及するようになると思う」や、理科(知識・理解)「シミュレーションソフトやアニメーション、ディジタルコンテンツなどを活用し情報提示することで、直接観察できない事象をより深く理解させることができると思う」。
一方、表現力や思考・判断力といった総合的な能力についてもIT活用が効果を発揮すると認められている反面、「ITを活用することで教師の負担が軽減し、子どもと触れ合う時間がより多く確保できる」といった効率化の側面の評価は小中高校ともに低かった。
さらに、134の実証授業についても4観点で評価を行った結果、小学校と高校では関心・意欲・態度、中学校では知識・理解が最も効果があると考える教員が多い。
【2005年8月6日号】