第24回ICTE情報教育セミナーが、5月15日(日)、慶應義塾大学三田キャンパスで開催された。主催は情報コミュニケーション教育研究会(略称ICTE・会長水越敏行大阪大学名誉教授)。会場には、教科「情報」に携わる多くの教員が集い、現場の実践に即した事例が報告された。
水越会長は、セミナー開始に先立ち「一番大切なことは、各教科をクロスしてどう『情報』を使いこなしていくかが肝心。例えば台湾では、各教科での使いこなし方が全く違う。現在日本では、大学生が使いこなせず再教育を行い、8月からの授業にようやく間に合うという状況だ」と述べた。
大阪教育大学・越桐國雄教授は、教科「情報」A、B、Cの各地域の選択状況(資料提供・日本文教出版)について、「情報Aを選択している地域は圧倒的に多いが、年々減少の傾向にある。BやCの選択傾向については、地域差がある」と指摘。調査によると「Aの採択率トップは香川県、Bの採択率トップは三重県、Cの採択率トップは北海道。また、富山県では、平成15年度から17年度にかけ、急速に『情報A』離れが進んでいる」状況だ。越桐教授は、「次回の学習指導要領改訂までは、引き続きこの傾向が続くと予想される。平成21年度には、『情報A』がなくなる可能性もある」と指摘した。
岐阜県立大垣北高の高納成幸先生は、「情報B」の実践例を、早大高等学院の橘孝博先生は「情報C」の実践を紹介した。また、教科「情報」で育てる学力と評価について、岩手県立大学ソフトウェア情報学部・鈴木克明教授は「人を評価することはできない」「評価は最後にやるものではない」「プロセスを評価すべきではない」「観点別評価は自己評価に限定せよ」と主張した。
立ち上げて5年目を迎える神奈川県情報部会の会員・横浜清陵高・小島淳子先生からは、教科「情報」における統一テストの試みが報告された。現在教科「情報」導入前と導入後のテスト結果データを集計中だ。 (http://www.johobukai.net/)
富山県教育委員会では、教科「情報」が導入された平成15年度以降、定期考査問題の収集と分析を行っている。それによると、平成15年度は「情報手段の適切な利用」「知的所有権」「情報伝達・デザイン」などの項目の出題率が多かったが、16年度は「情報モラル」「ネットワーク」などの出題率が増加している。また、「表計算」においては、エクセルの使い方の出題は減り、グラフの見方や示し方など、統計処理方法が増えるなど、質的変化が見られたという。
藤井修二主事によると、富山県の傾向では「情報BではなくCを選択」する高校が増えているという。これは、「教える側にとって、情報Bは重たい内容である」からではないか、と藤井主事は述べる。
東京農工大の辰己丈夫助教授は、2004年度から、教科「情報」に関する入試について、愛知ほか6大学が2006年より実施であり、現在国立8大学が実施を検討していると述べた。
【2005年6月4日号】