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Web授業普及に弾みか
立命大が20高と締結
〜高大連携協定〜

修了生を「特別推薦入学」
  立命館大学理工学部と情報理工学部は今年3月、全国の高等20校(公立1校、私立19校)と「高大連携に関する協定」を締結。それぞれ最先端科学技術とホームページ作りをテーマに5月から7月まで高校3年生を対象にインターネットを介した「Webライブ講義」(1コマ60分、平日放課後)をテーマごとに隔週計4コマ16時すぎから配信している。8月にスクーリングを開き、修了すると特別推薦入学につなげる珍しい試みだ。

 「理工系学部には幅広い学部・学科があり、受験校・学部選びの段階から、大学の中身をよく知ってもらい進学してもらいたい。また合格後早い段階から大学教育に馴染み、学びの目的意識をもってもらいたい」と立命館大学高大連携推進室の宮下明大課長は協定締結のねらいを語る。

 提携先の高校は立命館に進学実績の多い学校を中心に、中部・関西・中国・九州地方の高校から20校を選定した。高校ごとに特別推薦入学の枠が設置され、Web講義を受けて課題レポートを提出、8月に実施される2日間のスクーリングをクリアし成績等特別推薦資格を満たせば、生徒は無試験で立命館大学に入学できる仕組みだ。同枠は、理工学部で約200人、情報理工学部で約140人設けた。

 高校では−−。15人の特別推薦枠のところに19名の生徒が受講している私立大谷高校(京都)進路指導室長の田中岳人教諭は、「生徒が事前学習をしてスムーズに学部に入学でき、専門分野の将来の夢に向かって進むことができる。本人も納得して行くことになる」と歓迎する。

 私立関西大倉高校(大阪)進路指導部長の北英太郎教諭も「大学・学部・学科の名前にひかれて入学しても、想像していた内容と異なることがある。かといって、学科紹介の本を読んでも専門的な内容でイメージが沸いてこない。生徒に学問の中身を知らせるにはよい試みだ」と語る。

 進学指導ではなく進路指導を−と言われるが、大学の教育内容に直に触れられるよい場であることも確かだ。

 Web授業はパソコン教室や視聴覚室などで一斉に実施する。Web画面からIDでログインするだけで、高校側に特別な設備はいらない。学校ごとに質問担当校が順に設けられ、ネットを介しての質疑応答や、パワーポイントやWordなどの資料も示される。再度学習したい生徒は家にインターネットに接続したコンピュータがあれば、生徒一人ひとりに配布されたIDとパスワードで家庭からでもストリーミングで見ることもできる。

 講義について「内容は濃い。生徒もマイクで質問をしたり、Web授業を面白がっている」(北教諭)、「分かりやすく、60分の中で必要なことが話されている。ただ、レポート提出があるので、常に教員が付くようにしている」(田中教諭)と肯定的だ。

 高校の課題は同協定の運用、選択肢の拡大か。「国立大学でも同様のことを実施してくれれば」という声も聞こえてくる。立命館大学は今年秋に学部横断的な内容で「高校2年プログラム」も設置する予定だ。


講義内容
 理工学部のテーマは「最先端科学技術」で、「21世紀のロボット社会に向けて」や「大規模集積回路(LSI)とは何か?」といった内容。情報工学部のテーマは「自分のホームページを作ってみよう」で、「インターネットの過去〜現在」、「WWWの仕組み」などだ。ロボット社会の授業では、ロボット開発に必要な技術から医療、福祉へのロボット技術の応用までロボット工学の基礎が講じられた。Web講義の期間は大学院生が「教育コーチ」として受講者をサポートし、8月休暇中のスクーリング(2日間、6コマ)は、対面講義のほか、実験や実習、学科別相談会も実施する。



【2005年6月4日号】


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