伝統的な教科と情報の評価との乖離
全面的な評価改善の難しさ指摘
「情報教育対応教員全国研修セミナー」開催
社団法人日本教育工学振興会主催、パソコン検定協会共催で、中学「情報とコンピュータ」、高校「情報」における学習評価の在り方を考える全国セミナーが4月23日に池袋・メトロポリタンで開催。中学・高校の技術・家庭科、情報担当の先生150人が集まり、内容の濃い講演や質疑応答が行われた。
満席の盛況で、参加者は「中央の意見が聞くことができ大変参考になった」「ヒントが多くあった」と感想を語り好評だった。
調べ学習やプレゼンテーションなど新しい学習活動が展開されつつある中、生徒のやる気を引き出し、個に応じた指導と評価を行う評価方法の改善は、どの教科でも課題となっているが、特に実習を伴う「情報とコンピュータ」、「情報」ではいかに評価するかが、大きな課題となっている。
「大変参考になった」と参加者 ◇ ◇ ◇
セミナーでは、まず国立教育政策研究所教育課程研究センターの工藤文三・総括研究官が観点と評価方法の適合性、評価規準に応じて評価する際にワークシートを活用する重要性や、指導計画・内容は前年度の評価を踏まえ修正・改善されているかチェックすることの重要性、といったことについて言及。ある学校の取り組みとして、学校長が学年末に全教員を面接し、個々の教員の評価方法などについて反省していることを例示した。
◇
永野和男・聖心女子大学教授は、情報A、B、Cの各教科の特性や情報教育の3つの目標と4観点との関連などについて語りながら、情報A、B、Cの各教科で育てるべき問題解決能力の対象は、A→Cで、自分と身の回りの事柄について→社会的事柄、へと質的に変化していくことなどを指摘した。
また、立正大学の担当者から、1年次に学生にP検3級・4級を受験させ、確かな知識とスキルを身につけさせていることなどが報告された。
続いて、永野教授をコーディネータに、中学・高校の教員等をパネリストにシンポジウムが行われた。まず、永野教授が「英語はTOEICやTOEFLなど外部評価をほとんどの大学が活用している。(一方、学校では)新しい学力を評価する仕組みがまだできていない。ニーズがあるので、段々外のものが動き出しているが、情報も段々そうなっているだろうと思っている」と前置き。
◇
技術・家庭科の教員で現在は埼玉県立総合教育センターに勤務する大竹伸明指導主事は、「埼玉県の評価の状況を見ていると、手段と目的が混在している」と言及しながら、技術・家庭科における様々な題材ごと、4観点別の評価規準を例示。あわせて、県が作成したITスキルの目標「小・中学校におけるコンピュータ技能段階表」(Webでも公開されている)を提示。レベル1〜3は小学校で、4〜6は中学校で習得する。現在、高校のスキル目標表を作成中という。
◇
教科「情報」について、先行して実践を積んできた富山県立大門高校の江守恒明教諭は、「新しい学習指導要領が出ると読むが、客観的で分からない。どうすればいいか、というと評価規準を他のものを参考に自分で作るべきだ」と語る。江守教諭が薦めるのが、評価支援ソフト「Rubric Chart」。教員が評価項目を作り、その達成度をグラフで表示することができるもので、そのソフトを同校では生徒の自己評価ツールとしても活用している。「評価は、教員が評定をつける手段としてするものだが、生徒自身がメタ認知することが大切」と指摘する。
◇
また、前・文部科学省教科調査官で現・茨城県教育研修センター情報教育課課長の中村一夫氏は、「4観点を総合した評価を。ペーパーテストによる知識面だけを重視するなどの偏りは避けるべきだ」と強調する。中村課長は、参考になるシラバス・実践事例として、Webで公開されている神奈川県、栃木県、愛知県教育センー作成の事例を紹介した。
一方、会場の参加者から他教科は相変わらずペーパーテストで順位付けしているのに対し、情報は絶対評価。伝統的な教科と情報の評価との乖離、高校における全面的な評価改善の難しさが指摘された。
会場から質問も相次いだ(2004.4.23取材)
【2004年5月7日掲載】