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特集
教育現場の“情報化”実現のために
市町村の情報化予算獲得を支援
 県及び市町村の来年度予算の折衝・決定期。自治体により、教育の情報化がかなり遅れぎみだ。そこで、教育情報化に向けた国の施策、IT教育の目標、産業界の要望等を改めて振り返り、市町村の情報化予算獲得に資する特集を企画した。


“国”の立場から
「努力する」自治体には助力する

中川健朗参事官
文部科学省
中川健朗参事官
 e−Japan目標達成の年まであと1年半。来年には、目標達成に尽力すべき期限を迎える。しかし校内LANの整備達成は平均で4割弱となっており、かつ地域格差も激しい。この状況から如何に目標達成を実現するか。文科省初中局参事官の中川健朗氏に文科省の動きを聞いた。

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 世界最先端のIT国家であるはずなのに、このままでは「教育現場は例外」ということになりかねない。この状況をなんとか打破したいと考え、IT教育環境を促進するために設立された「教育情報化推進協議会」を、文科省・総務省・経済産業省が強力に支援していく。協議会は、研修会やセミナーを全国的に展開、情報を幅広く提供する。「地方公共団体(首長部局・教育委員会等)への訪問活動」も行っていく。

 情報教育を専門としている人やe−Japanについて熟知している人以外への理解と浸透は、目標実現のために必須の活動。教育問題全体に取り組んでいる人をもターゲットにした資料を作成、機会あるごとに、各地区の教育長にも直接資料を提示、理解を求めている。中でも校内LAN達成率の数字はシンボリック。全体平均で37%の達成率だが、地域格差は、最高の岐阜県と最低の東京都で80%もの差がある。「ここまで地域格差があるのは知らなかった」と認識を新たにする方が多いと実感している。

 現状では、目標の実現はそう簡単なことではない。教育を取りまく状況は、地方の財政事情も含め、厳しい状況にある。本来、e−JAPAN実現は地方交付税措置などで地方が自ら行なうもの。しかし、本当に努力して汗をかき、目標実現に積極的に取り組もうとしている自治体は支援していきたい。そのように、目標達成に向けて努力している自治体をサポートすることを念頭において、概算要求している。

「e−JAPAN実現型教育情報化推進事業」として、全国平均を下回っている地域(1地域5箇所を想定)を対象に「ネットワークの整備・管理・運営及びその活用」に関する講習会を実施する、などにより促進していきたい。
 この講習会では、校内ネットワークの授業での効果的な活用方法、校内ネットワークを利用した効果的な校務処理の方法等についても扱い、その活用を促していきたい。

 教育を取りまく課題が多くある中、これらの解決に資するように、教育情報化を進めていくためには、ハード・ソフト両面にわたる努力が必要。逆にITを武器として教育に取り組んでいるところは、こうした課題克服にもいろいろな選択肢が出てきている。そうした努力をしている自治体に対しては、情報提供なども含めた効果的なサポートをしていきたい。


“産業界”のニーズから
IT業界の「総合職」育成を

藤本真佐代表
デジタルハリウッド株式会社
藤本真佐代表
 2004年4月、株式会社立として日本初の専門職大学院「デジタルハリウッド大学院大学」が開学した。大学院には、ITとコンテンツの両分野を専門とした、プロデューサー・ディレクターを育成する「デジタルコンテンツ研究科」を設置しており、平均30歳・60名が学ぶ。在席学生の3割が起業を目的にしているという。また、来年度には大学を設立、この8月に36万5000人が受験した河合塾の全国模試では、入学定員190名に対して14・5倍にあたる2768名が同大学を志望するなど、新設大学としては高い倍率と注目度だ。代表の藤本氏に、産業界ではどのような人材を欲しているのか、聞いた。

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 今、産業界で最もニーズが多いのが「ディレクター」や「プロデューサー」の存在です。

 以前はエンジニア不足と言われており、現在も確かに必要とはされていますが、充足率でいうと「ディレクター」「プロデューサー」が圧倒的に足りないのです。いわゆる「IT業界における総合職」の不足ですね。

 そこで大学院と4月から開講する大学では、それら人材の育成に力を入れています。

 ディレクターの役割は、コンテンツ制作そのものの「監督」です。コンテンツを制作するために、的確な指示を出し、ストレスなく進捗させていくには、制作やビジネスの仕組み、企画力など様々な要素の知識が必要です。

 また、プロデューサーには、企画の発想やその企画をビジネスとして組み立てる力、ディレクターを指名しプロジェクト管理を行う力、広告やプロモーション、制作物の売り込み、などビジネス上の様々なスキームが必要になります。交渉事が多いので、社会人経験が必要といえます。



拡大する自治体間格差
 文部科学省の情報教育の実態調査が7月に公表されたが、予想以上の遅れを示す結果となった。

 平成16年3月末現在の教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数は、全体で8・8人/台となり(前年度は9・7人/台)、2005年度末の目標である5・5人/台に一歩近づいた。

 一方、2005年度末に100%を目標とする整備計画と大きく乖離しているのが、校内LANの整備率37・2%(前年度29・2%)で、計画の達成は絶望的である。普通教室へのコンピュータの整備率も20・2%と低い。問題は自治体間格差である。既に100%校内LANを整備している自治体(郡山市、鹿児島市)もあれば、0・1%の自治体(大分市)もある。県全体でも84・7%に達した県(岐阜県)がある一方、8・9%と一割に達しない県(東京都)もあり、教育条件の格差が非常に大きい。

市町村の詳細データ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/07/03072301.htm



【2004年11月6日号】