校内LAN整備は危機的状況
目標未達成でも継続は無理か
校内ネットワーク活用推進フォーラム
■東京・福岡・岡山・仙台
校内ネットワーク構築のためには活用方法のイメージを一般教員や管理職に広げることが必要だ。その一助として、「校内ネットワーク活用推進フォーラム」が福岡・岡山・東京・仙台において開催された。(うち仙台は9月開催予定)主催は社団法人日本教育工学振興会(以下JAPET)。東京会場では8月27日に開催、全国の教育関係者らが参集、校内LANの現状と未来について学んだ。
コーディネータの堀田龍也氏(静岡大学情報学部助教授)は「校内ネットワークは水道のようなもの。校内ネットワークが整備されていないのは、水道管が家の中に引かれていない井戸の時代と同じ。使っていない人は、水道の便利さが想像できず、学校に1本だけ来たインターネットだけでありがたがってしまう。校内ネットワークを体験していない人は、便利さや必要性が分からず、予算確保も、ネットワークを前提とした校務や学習成果もイメージできない」と述べる。
JAPETの宇田川勝之氏は「義務教育の経費を国と地方でどう分担していくのか。これからは、首長のさじ加減ひとつで教育費が変わっていく。先月より立ち上げた教育情報化推進協議会では、9月以降よりセミナー等を開始、予算獲得のためにも各教育長に直接アクセスするなど努力をしていく所存である」と述べた。
文科省初中局参事官・中川健郎氏は基調講演で「校内LAN整備の状況は現状で4割弱。平成17年度までに100%が目標ではあるが、たとえその時点で達成しなくても、事業が継続するとは限らない。各地方公共団体には、最終年度であるという自覚をもって、この危機的状況をなんとか脱してもらいたい」と述べる。
公立学校のIT環境整備に関する地方交付税措置は、平成16年度で約2050億円。「校内LAN整備率は、平成15年度末で全国平均37・2%。特に低いのが東京都で、整備率はわずか8・9%。整備率トップは岐阜県の84・7%だが、東京都の人はこの差を知らないのでは」。
都内の市区町村別校内LAN整備状況でいうと、4割以上が千代田区・小笠原村・品川区・三鷹市。3%以下は28地区あり、うち、校内LAN整備率0%は、文京区・杉並区・府中市・小金井市・国分寺市など、なんと21地区にも上る。
「ITのなんたるかを知らない人に限って、IT教育より人間の教育を、と言うが、それは間違いだ。人の教育のためにもITの活用は重要。それを知らないのは、経験不足といえる。ITの素晴らしさを知らない人にそれを広める手伝いをできる限りしていきたい。今は、2005年を目前にして皆が危機感を共有している、最後のチャンス。来年以降はわからないが、今なら動けるはず」と述べた。
パネルディスカッションでは、「活用を支える校内ネットワークのあり方を考える」をテーマに、高橋純氏(富山大学)、成瀬啓氏(宮城県教育研修センター)、土田幹憲氏(札幌市立美しが丘小)らがパネラーとなって討論した。
コーディネータの堀田龍也氏は「校内LANを使ったことがない人には、何が便利で何故必要なのかがわからない。コンピュータと違って目に見えないので、予算削減の対象にもなりやすい。しかし、教員がITを知らないことに負の効果は非常に大きい。日本の教育の重要な問題だ」と述べた。
成瀬啓氏は昨年まで小学校に勤務していた自らの実践から「ネットワークは、使えば使うほど楽しくなり、楽になり、必要になる。それを教委に伝えるのが現場の役目。管理職が使うと情報化の進捗が進む傾向がある。トップダウンとボトムアップがかみ合うことが必要。子どもの姿を隣の先生に見せる方法も有効。ITではなく、授業で説得する。また、コンピュータのスペックが良くても、水道管にあたるLANがぼろぼろだとダメ。まずは水道管の構築を」と報告した。
土田氏は赴任当初から校内ネットワークの構築に関わり、教員らと販社両者に働きかけ、「ニーズを生み出すシステム構築」実現のため、「あるべき姿」を検討してシステム仕様を構築した。「どこに座っても自分の環境になるのが、ネットワークのすごい点。フォルダ管理を活用するためにも、学校のコンピュータ活用は、・認証・から始まる。統一感のあるシステム設計のためには研究者や先行者の先例を参考にすることが必要。ベースウェアも重要である」と述べた。
高橋氏からは、大学におけるネットワークの活用例を報告。「シラバスの公開と登録、学生の履修登録や施設予約など、全てHP上で行っている。入試も高速インターネットに接続したコンピュータを使い、まとめるといった方法が出てきた。既に使う、使わない論は遠い過去になり、課題はうまく使う方法の検討」と述べた。
これについて堀田氏は「大学は学校現場の少し先をいっている。事務処理はほぼ情報化が完了し、情報モラル教育と個人情報保護が課題となっている」とまとめた。
ディスカッションでは活発な討議がされた。「情報化は今後どんどん進んでいく。・2チャンネル・を知っている高校生は8割、ところが教員はほとんど知らない。情報化の力をどう学力に反映していくかが課題。しかし授業イメージの普及が連動しないと実効性は低い。これではまずい。知らない、が一番の問題。情報化の陰の心配ばかりではなく、今こそ・光・の部分の実践をしていくべき」と、堀田氏は討議の内容を総括した。
【2004年9月4日号】