6月20日に「高齢者・障害者等配慮設計指針」として「WEBアクセシビリティ指針JISX8341−3」が発表されて以来、WEBコンテンツの「アクセシビリティ」に強い関心が集まっている。これを受け、マクロメディアでは7月14日、セルリアンタワー(東京都)にて「Macromedia WEB アクセシビリティセミナー」を開催した。当日は定員を大きく上回る700名を越す参加者が集まり、アクセシビリティに対する関心の高さをうかがえわせた。
「アクセシビリティ」とは、障害者や高齢者などが、特別の負担なく容易に「WEBコンテンツ」にアクセス・利用ができること。「JIS X 8341−3」は、それを実現するための「指針」だ。
それによるとWEBコンテンツは、可能な限り高齢者・障害者が操作・利用できるよう、できるだけ多様な環境を想定したものとすること、常にアクセシビリティを確保・向上に配慮することなどが求められている。
ここで示す「WEBコンテンツ」とは、インターネット・イントラネット上のコンテンツのほか、WEB技術を用いた電子文書や電子マニュアル、WEBブラウザを用いて操作する機器すべてを指す。具体的には、「利用者が誤操作をしても元の状態に戻すことができる手段の提供」「色や形、位置のみで内容や操作方法を示さない」「音を自動的に再生しない(推奨レベル)」「想定する利用者にとって、読みの難しいと考えられる言葉を初めて使用するときは、読みを明示する」といった項目が盛り込まれている。
植木氏は「これら規格を完璧に満たすのは大変だが、サイトにフィードバックフォームを作り、ユーザの声を反映できる仕組みを作っておくことは大変重要」と述べた。
コンピュータ製品及びサービスの仕様は、JIS規格、ISO規格に準拠すること等が求められている。また、本年5月末、「障害者基本法」が「国及び地方公共団体は、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たっては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならない」と一部改正された。
総務省は、e−Japan構想に変わるものとして、u−Japan構想を打ち出した。uは「ユビキタス=いつでも、どこでも」「ユニバーサル=何でも、誰でも」の意だ。
植木氏は「多様なユーザが多様な使い方をしているのがWEBの世界。WEBの発注者や制作者は、その事実に気づくことが必要である」とまとめた。
■アクセシビリティ
関心のピークは一年後だ マクロメディア社のボブ・リーガン氏は、スピーチで「世界中のデザイナーが日々直面する問題の多くは
スクリーンリーダーに関すること」とし、「HPリーダー」について紹介、具体的にどのようなページがどのように読み上げられるのかをプレゼンテーションし「コンテンツが意味のとおる順番で読まれる」ことを確認することの重要性と、アクセシビリティ実現のための有用なツール「ドリームウェーバーMX2004」について説明した。「ドリームウェーバー」はアクセシビリティチェックをかけると明らかな問題点を指摘する機能を持つ。また、スクリーンリーダのユーザ」が抱える大問題のひとつに「自分が関心を持つセクションにいきつくまでに聞かなければならない量の多さ」を上げ、「関心のない分野をとばし関心のある部分に飛ぶことができるCSSをサポートしている点がドリームリーダの大きな特徴」と述べた。
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第3部では、「アクセシブルなWEBサイトとは何か」をテーマとし、ボブ氏ら5名がディスカッションを行った。
石川准教授(静岡県立大学)は視覚障害者の立場から「視覚に障害のあるものにとって現在流通しているフラッシュはアクセシブルではないが、JIS化によって関心に火がついた。今後、アクセシブルなサイトの増加を望む」と述べた。アクセシビリティに2年前から取り組む高橋氏(富士通)は「富士通のWEBにはアクセシビリティがある、という面で相談受ける。とくに昨年は多かった」と、昨今の関心の高さを裏付けた。同様にアクセシブルなWEB制作を実践しているNORI氏(トゴル・カンパニー代表)も「制作者は、自分の作ったフラッシュがどこまで読まれるのか、スクリーンリーダーを使って再生してみてほしい」と述べた。
ボブ・リーガン氏は最後に「今、日本ではアクセシビリティの関心が高まっているが、これがピークに達するのは1年後になる。最もアクセシブルなWEBデザインは日本から始まるだろう」と予言した。
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スクリーンリーダ= 視覚障害者のために開発された、パソコンの画面を音声で読み上げるソフト。
【2004年8月7日号】