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シンポジウム
教科「情報」の確立へ
教員の適正配置を

3つの目標バランス良く
 教科「情報」を根付かせ発展させるために−−「情報教育シンポジウム−高校普通教科・情報・への期待と課題−」が7月31日、東京大学山上会館で開催され、高校教諭及び大学関係者が集まり、講演とシンポジウムを通し議論がなされた。

様々な意見−−▽e−Japan計画は整備目標のみでIT活用の教育目標が示されていない▽教科「情報」の教育内容は、小・中・高校・大学を見通した中で議論すべき▽情報教育の3つの目標のバランスの取れた教育を▽教科「情報」を大学入試の試験科目にすべき−−が上がった。

主催は、教育システム情報学会と情報処理学会。



 午前中の辻村哲夫・東京国立近代美術館長、長尾真・京都大学名誉教授、岩本宗治・大阪電気通信大学教授の基調講演・特別講演に続き、永井克昇・文部科学省教科調査官が「教科・情報・の実践の課題」について講演。

 永井教科調査官は、現状と課題について概要次のように報告。15年度から高校に選択必修として設置された普通教科「情報」の16年度の履修比率は、「情報A」が約8割で、「情報B」「情報C」が1割ずつと「情報A」を設ける学校が圧倒的。15年度に比べ「情報A」の比率が若干下がり、「情報C」の比率が少し上がった。また、教科「情報」の担当教員の研究会は、今年は33県で研究会が立ちあがっている。一方、「情報」担当教員がまだ適性に養成・配置されていない県もあり、12〜14年度の現職教諭の養成を再実施してほしい、という要望を寄せる県もある、と。

 課題について、永井教科調査官は「3つの目標をバランス良く学習させるのではなく、操作の習得に偏ってしまう傾向がある」「A、B、Cは教員の考えではなく、生徒の実態に応じて選ぶべきである」と指摘した。

 シンポジウムでは、岡本敏雄・電気通信大学大学院教授がコーディネータになり「教科・情報・発展のための条件と課題」について意見交換。

 筧捷彦・早稲田大学教授は、e−Japan計画は人、物の整備については示していても、具体的に何をいかに教育するかが書かれていないと指摘。また、教科「情報」は高校だけの問題ではない。21世紀を日本がどう生きていくかに絡む話である、と強調した。

 天良和男・東京都立駒場高校教諭は、現在の教科「情報」の授業実態として、「C言語だけ教えている」「自分史作りだけをさせている」といった学校もある、と指摘しながら、「高校で評価される教科にするには3つの目標をバランス良く学習させることが重要」であり、情報は、国語、地歴、理科、英語、数学などあらゆる教科と関連する、と言及。また、情報活用の実践力や情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度などは、筆記試験でも十分測れる内容であり、大学入試に取り入れるべき、とした。

 石田厚子・日立製作所ビジネスソリューション事業部長は、IT戦略本部評価専門調査会が9月にまとめる初等中等教育の評価に関わっている。同氏は、論理的思考力と創造力の向上が求められると指摘。企業の求めるIT人材をマップ化し、求められる順位を、第1に「最上級IT活用人材」、第2に「上級IT活用人材」、第3に「上級IT開発人材」と「裾野を形成する人材」とし、「最上級IT開発人材」の必要性はやや低く「技術を買う」方法も取れると、言及した。

 西之園晴夫仏教大学教授は、日本の教育行政のハコモノ主義、設備に金をかけ教員を養成すれば教育が良くなるといったことはない、と批判した。求められるのは教育技術の向上で、「教育技術を誰が開発し、伝承するかを真剣に考えるべき」と指摘。また、教科「情報」については、論理性を重視した教科内容に、社会情勢を踏まえた情報教育にすべき、とした。

 情報教育の3つの目標=情報活用の実践力/情報の科学的な理解/情報社会に参画する態度



【2004年8月7日号】