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【特集】情報モラルの学習・指導教材 (2004/7/10号)
「情報リテラシー・モラル教育を考える」 メルマガ pick it up バックナンバー

情報モラル教育の広がりを
揺れる子どもの基盤−−支えは学校、地域全体で
 「インターネット上に潜在する『危険』に対する認識が薄いことなどから、『子どもとインターネット』の問題に対する社会的関心は決して高くなく、家庭や地域での取り組みは遅れている」−−これは、文部科学省が平成13年度からのメディアに関する継続研究として平成15年3月に地域での取り組みを中心にまとめた報告書「『子どもとインターネット』に関するNPO等についての調査研究−米国を中心に−」の一部である。コミュニケーションツール、情報発信・蓄積ツールとしてのインターネットの有益性は非常に大きいが、佐世保で起きた事件など不幸な事件のきっかけになる(原因ではない)といった影の部分を持つことも事実である。しかし、地域の公共図書館には情報モラルに関する書籍は非常に少なく(下の記事参照)、この点の教育・関心は遅れている。同報告書は、1.家庭に対する様々な情報提供 2.幅広い啓発広報による社会的意識の向上、などの必要性を提言している。

 小学校6年の女子児童が同級生を殺害した長崎県佐世保市の事件(6月1日)は、衝撃を与えた。文部科学省は翌日の都道府県・指定都市生徒指導担当指導主事連絡会議で再発防止に向け注意喚起と指導を行い、省内に「児童生徒の問題行動に関するプロジェクトチーム」を設置した。

 メディアリテラシーとは何か。テレビやインターネットなどのメディアの「情報を批判的に読み解く力」(前記の調査研究報告書から)、また情報や情報ツールを「子どもが的確に判断し、対処できる能力」(同)である。

 インターネットは既に、家庭の8割に普及している。テレビ同様、好むと好まざるとに関わらず、その存在から大きな影響を受ける。

 一方で、子どもの生活基盤自体が揺れている。筑波大学の新井邦二郎教授(発達臨床心理学)らが行った、5都県の小学校高学年児童3300人以上を対象にした調査で、小学生の1割に抑うつ傾向が見られた。「ハイリスクの子どもが相当いる」という。警察庁の統計によると、刑法犯少年(14歳以上20歳未満)も増加している。

 加速する情報化時代−。核家族で身近な人の死や生命に直接触れる機会が減少し、命の教育を行うのが難しい時代だが、それゆえにこそ、東京都北区立赤羽台西小学校の野間俊彦主幹は「『命の教育』と『情報モラル』の両輪の指導が必要」と指摘する。

 日本には、「ネット社会の歩き方」、「情報モラル研修用教材」、「情報モラル学習コンテンツ」といった充実した先行研究・教材があるが、この分野で大きく先行しているのが米国の民間・公的機関の取り組みである。

 94年ごろの「インターネットが子どものためにならない」という議論をきっかけに生まれた、個人が家族のサポートを受けながら運営するサイト「Net−Mom」。子どもが安心してインターネットにアクセスできるように、お薦めサイトや家庭へのアドバイス、などを提供する。

 別のサイトでは年齢ごとにインターネットにいかに関わるべきかや、ツールごとの危険が解説している。

 また、米国では図書館がインターネットの利用方法についても大きな役割を果たしている。例えば、米国の99%以上の図書館で無料でインターネットアクセスを提供し、Web上でインターネット利用のための親と子のガイダンスのページを設けている。

 県内の所蔵図書を横断検索
   茨城県図書情報ネットワーク
    情報モラルの図書少なく

 三重県、山梨県などで実施している県立図書館と県内の公共図書館の所蔵図書などを横断検索できる「茨城県図書館情報ネットワーク」を、茨城県はこの4月から運用を開始した。

 ◇ ◇ ◇

 県内公共図書館31館の所蔵図書を一度に検索でき、検索した本の題名をクリックすると、さらに詳しい題名が表示される。近隣の図書館に目的の本がなくても、取り寄せることができる。例えば、「情報モラル」と入力して検索すると、「インターネット時代の著作権とプライバシー」(久保田裕著)、「情報倫理学」(越智貢編)、「知っておきたい情報モラルQ&A」(久保田裕著)の3冊が表示。館別の所蔵状況を調べると県内8館で上記3種類の本計10冊で、この分野の著書はまだあまり所蔵されていないことが分かる。
 http://ref.libnet.pref.ibaraki.jp/ILN/

【2004年7月10日号】