教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディアニュース   バックナンバー
「創造性」をテーマにプレゼン
「エクセーヌ」の開発者 岡本氏が開発秘話
熱がこもるプレゼンテーション

 「創造的な能力」とは何か。「創造的な仕事」を成し遂げるための成功要因は何か−−「創造性」をテーマに、教科「情報」の時間を使い、情報を収集・整理、プレゼンテーションを行う授業が早稲田大学高等学院1年G組の半数・25名で行われた。

 指導・授業者は、東京農工大学総合情報メディアセンター・辰己丈夫助教授及び早稲田大学高等学院教諭・同教育学部講師の橘孝博氏。授業は2週連続で1時間ずつの合計2時間で行われた。



 ◇ ◇ ◇

エクセーヌの開発者 岡本三宜氏  社団法人研究産業協会では、平成6年度から、戦後日本の技術開発において顕著な業績を残した研究者に対し、「先達からの聞き取り調査」と題するインタビュー調査を行ってきた。若者の科学技術離れ、製造業離れが喧伝されており、このままでは日本の将来が危うい、何とか日本の若者を科学技術、製造業に回帰させたい−−というのが主旨だ。1年に10人程度の先達を選んでインタビューしており、その数は累計で90名を越える(16年3月1日現在)。この豊富な資産を学校教育に役立てたい、と各地で授業を実施、今回はその中から、スエード調人工皮革エクセーヌを開発、超極細繊維という新しい分野を開いた岡本三宜(みよし)氏の開発物語をテキストに、早大高等学院にて同テーマに取り組んだ。

 1週目は、「創造的な能力とは何か」について考える際のキーワードを指導の辰己氏が6つ提示、それぞれについて説明がなされた。
 各班は、キーワードより1項目を選択、岡本三宜氏の開発物語についてのCD−ROMとWeb情報を材料に、調査。調べたことをもとにプレゼンテーションを作成する。

 2週目は、プレゼンテーションの発表だ。あるグループの取り組んだテーマは「セレンディピティ」。発表者の大金和馬くんと作本大朗くんは、「セレンディピティとは、ある目標に向かい努力し続け、その途中で起こってしまった失敗から成功を見つけることである」とし、セレンディピティを発揮するために最も重要なことは「常に努力を怠らないこと・常識にとらわれないこと・常に同じ信念を持ち続けること・柔軟に考えること」と指摘、それぞれについて岡本氏の開発秘話から実例を挙げ、解説。テーマに対する理解度の高さが伺えるプレゼンテーションであった。

 プレゼンテーション終了後、岡本氏が後方より登場。岡本氏が当日現れることは生徒たちには知らせられていなかったため、教室は一瞬湧いた。
 岡本氏は、「創造的な能力を高めるための目的を持った情報の収集について」について講演、多くの非難や否定的な意見、事業撤退や社内失業などのトラブルを克服し、エクセーヌ開発にたどり着くまでの自身の考え方や対応など、経緯を話した。講演後、生徒らは岡本氏が持参した「超極細繊維」を実際に触るため、周りに集まった。

 担当の橘教諭は「単なる技術者の苦労話ではなく、創造的な能力を高めるための情報収集を行うという、実践的なお話でした。文系の生徒にとっては・企業の経営方針や製品販売の苦労話・、理系の生徒には・科学技術や製品開発の秘話・としても聞くことができ、高校生が興味を引くように工夫され、大変好評でした」と述べる。

 「プレゼンテーション能力」が問われる昨今だが、「刺激となるテーマがある」こと、その刺激は「リアルなストーリー」から生まれること、「伝えたいテーマを深く理解し、主張したい理論や発見がある」ことが、プレゼンテーションに深みを生む。

 ◇ ◇

 社団法人研究産業協会 http://www.jria.or.jp/
 「日本を変えた技術者たち−12の技術開発物語(CD−R)」 http://www.jria.or.jp/jria3/keisyoukeihatu/tenkai.htm


【2004年3月6日号】