日本におけるインターネットの教育利用がスタートした1994年に産声をあげた東海スクールネット研究会の「第43回例会&10年目記念国際シンポジウム」が12月14日に、名古屋市で行われた。
同会は小、中、高校の先生方のIT活用に関する研究集団。動画コンテンツや携帯電話の授業での活用、高校普通教科「情報」の実践事例など、会員の日常的な授業実践を例会やメーリングリストを通じて発表・意見交換するとともに、ネパールをはじめとした海外の学校との国際交流も行っている。
今回は研究会設立10年目を記念しての国際シンポジウム。カナダからメディアリテラシーの専門家であるニール・アンダーセン氏、米国からICT活用の国際比較研究を行っているボブ・コズマ氏を自費で招き、赤堀侃司・日本教育工学協会会長(東京工業大学教授)を交え討論形式のシンポジウムを開催した。
ボブ・コズマ氏は、トロント市教育委員会の英語科・メディア科のアドバイザー。オンタリオ州には200を越す学校があり、同州では幼稚園から第8学年までは国語科で、第9学年から12学年までは英語科の中でメディアリテラシー教育が義務づけられているという。
メディア教育は、「オーディエンス」、「テクスト」、「制作」を3辺とする三角形を考えることによって実践できるという。
アンダーセン氏は、短いドキュメンタリー番組をビデオで見せて、模擬授業を行った。インターネットが誕生してから10年後に生まれた番組で、様々な人に対してインターネットの感想についてのインタビューで構成されている。そのビデオを最初は早送りで見せ、次に普通のスピードで見せて、参加者に気づいたことや自分の考えを話し合わせた。
実際の授業では番組の視聴後、製作者の立場に立って考え、番組を作ることもするようだ。
「北米の教師はアイデンティティ危機に苦しめられている。情報の提供者ではなく、コーディネータになっている。このことは、心地好いものではないが、順応していかなくてはならない」と日本でも共通する課題も指摘した。
続いて、赤堀氏はIT活用も五感を働かせなければならないと強調した。先日同氏が出席した国際会議でも「ブレンド」がテーマになったということで、「IT活用の課題は見るだけになっていることがあること。話す、書くなど自分が主体的に取り組まないと、学びにならない」と指摘した。
米スタンフォード研究所のボブ・コズマ氏は、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど28か国が参加した第2回国際情報教育調査について報告。同調査は国際委員会によって定義された基準のもと、各国で選定基準を設定。174の授業革新事例を集めた。(
http://www.
sitesm2.org/)。
リサーチプロジェクト、シュミレーションなど理科教育の革新事例について報告。「IT資金投入に見合う効果が上がっているのか、各国で関心が高まっている」と語った。
各事例は、上記URLで読むことができる。
【2004年1月1日号】