ネットワーク、IT活用の近未来
電子ボードで学習成果
e-黒板研究会がミニシンポジウム開催
■IT活用の敷居を低減
「黒板を使って良い授業をしている先生は、たくさんいる。そうした先生が電子情報ボードを使う敷居はコンピュータに比べて低い」とe−黒板研究会座長で国立教育政策研究所教育研究情報センター長の清水康敬氏。
学校でのIT活用を促進することが期待される電子情報ボードの要件調査と活用方法の調査・研究を行うことを目的とした「e−黒板研究会」のミニシンポジウムが12月16日、コンピュータ教育開発センター会議室で行われた。
同会では授業の実践事例の収集・評価やサンプル教材の試作、ツールソフトのプロトタイプの開発などを目的に活動している。
シンポジウムで岡山県情報教育センター次長の平松茂氏は、同県の小学校算数・社会・家庭科、中学校体育、高校英語・家庭科などの各校種・教科で、3年間にわたり行った授業実践について紹介。電子情報ボードで教材を提示、説明することにより、「先生これでいいの、と聞く割合が減りました」という。中学校の体育では、サッカーのキック時の足の角度やつま先の入れ方などが分かるコンテンツを電子情報ボードで映し出しポイントで止めて分かりやすく説明した。
小学校の算数「九九」の学習では代表の児童が前に出て電子情報ボードと関わりながら、あらかじめ準備した資料や児童の書き込みなど教材を切り替えながら学習した。
スマートテクノロジーズIncのナンシー・ノートン社長は、電子情報ボードの利点や効果、普及に向けたステップなどについて説明し、「電子情報ボードは先生が使うだけでなく、生徒が参加してクラス全体で使うことができる。実際に、電子情報ボードを使うことで、足し算の問題で使わない生徒は平均41点だったのに対し、使った生徒たちは平均75点と、学力が向上している」と学習効果を上げた。
■生徒の集中力向上に寄与し
電子情報ボードを導入することで、生徒の集中力が向上し、授業への積極的な参加が生まれるという。教材はインターネット教材、デジタル・コンテンツ、通常のアプリケーションを用いた教材を幅広く利用できる。
一方、導入については、「教師に押し付けても結果的に使えない。教師が喜んで利用し始めるチャンスを待ち、使い始めたらその教師を優先的にサポートしていく」ことが重要だ指摘した。
世界を鳥瞰すると、英国では戦略的に新技術を採用。そして、ウェールズ州では全学校に電子情報ボードを導入しており、BECTA(英国教育工学協会)がその活用事例や効果について多くの報告書を出している。また、米国では州ごとに計画を立て、地域によっては時間をかけて新技術が導入されていった。カナダは米国と似ているが、州全体で大量導入計画が進行中という。
最後のミニシンポジウムで、中川正樹・東京農工大学教授は、電子情報ボードを不登校対策に活用している研究について紹介。任都栗新・東京学芸大学助教授は、「教科学習において黒板を使って日本はかなりの成功を収めてきた。その延長で機器の導入を先生方と一緒に考えていきたい」と今後の方向性を示した。
【2004年1月1日号】