「落ちこぼれゼロに向け、質の高い先生を」と米国、「教員研修にはまず、教員同士のコミュニティ形成を」と日本。3月9日、日米の教育におけるIT活用に関する課題が浮き彫りとなった。
早稲田大学で開催された「国際教育シンポジウム−21世紀のe−education日米の展望−」(主催・早稲田大学、早稲田大学IT教育研究所、共催・東京アメリカンセンター等)で発せられたキーワードは、参加者を頷かせた。
米国教育省長官官房教育テクノロジー室シニア・プログラム・アナリストのレイ・マイヤース氏は、米国の教育政策である落ちこぼれゼロ運動「NoChildLeftBehind」について説明。政策目標として、3〜8年生で、読解と数学の評価テストを実施。低学年では読解と数学に重点を置くなどを掲げ、年次テストの実施や2005年までに全公立学校に質のよい教師を配置するなどの項目を要求として打ち出した。「質の高い教員配置、落ちこぼれゼロに」マイヤース氏はテクノロジーの活用が、新しい教育体系を確立できると期待。教育強化のため、予算が4億5000万ドルから7億ドルへ増加したと告げた。
続いて、文部科学省生涯学習政策局学習情報政策課長のl原靖氏は、「日本の高速インターネット接続料は世界を見渡しても低価格。ブロードバンド化を受け、教育情報ナショナルセンターのコンテンツも平成17年度までに約10万件の整備を図る」と強調。
実践事例としては、テキサス州アービング学区技術サービス部長のジェニファー・アンダーソン氏が、「アービング学区は貧困層や英語を母国語としない児童・生徒が多い。1クラスに最多で4つの学年が混在している。学習の遅れを補うのはIT」と、ビデオ教材をたくさん見せたり、教材をダウンロードできる仕組みを整えたことを報告した。
また、墨田区立墨田中学校の三橋秋彦氏が、発表したいことを画用紙にまとめるかのようにWeb上に公開できるWebExpoを紹介、半田市立亀崎小学校の丹波信夫氏は、5地点間でのTV会議の様子やネパールとの交流風景などを投影、ペンタッチでポイントを指し示しながら会場に向け、子どもたちの意欲的な姿を伝えた。
さらにアメリカン・スクール・イン・ジャパン初等教育技術専門員のジョン・ミクトン氏は、学年別のガイドラインを公開しているなど、小学校におけるデジタル・リテラシー育成のための工夫点をあげた。