コンテンツの流通方法を実験

         全国9候補地で 

 学校もCD−ROMではなく、ネットワーク上から教育素材データなどを取り出して授業に活用する時代に−−2005年度までに普通教室も高速でインターネットに接続する環境の実現が国の政策により進められている。そうなったときに考えられるのが、動画コンテンツなどを地域イントラネット内のサーバから引き出す、あるいはプロバイダのサーバから引き出して利用する授業形態。しかし、教育用コンテンツの配信やユーザ認証・課金の方法、著作権保護の方法など具体的な仕組みはまだできていない。そこで総務省では昨年8月、教育用コンテンツの充実と流通市場の仕組みづくりを目的に、教育用コンテンツ流通プラットフォーム形成協議会(EduMart協議会)を設立し課題の検討を進めた。今年度は新規事業「ブロードバンド・コンテンツの制作・流通の促進」(26億円)で、教育用コンテンツ流通のプラットフォームを地方自治体やネットワーク事業者などが主役となり15年度までに構築する。そのため、札幌市など9つの候補地で実証実験を行う。

 「教育用デジタルコンテンツの市場を作るのがねらい。この実証期間中に先生方がお金を出してでも地方自治体の予算をかけてでも使う価値あり、というものを作っていかないといけない。コンテンツの利用も非現実的な価格ではなく、オープン性と安全性を踏まえたマーケットを提供していく」
 「絶対不可欠な要件は、主体的な地域側のプロジェクトであること。ただ待っていれば何かが飛び込んでくるわけではなく、首長も含めて全面的に取り組んでいきたい、という強い意志のある地方自治体しか選んでいない。費用負担も含めていろいろと汗をかいてもらわなければならない。民間も総務省は設備は提供するが、システム開発は自社のリスクでやってもらう。実証実験できる機会を提供するのが総務省の仕事」と語るのは、総務省コンテンツ流通促進室の大橋秀行室長。
 候補地は、札幌市、三条市、西東京市、長野市、箕面市、大阪府、岡山市、福岡市、沖縄市の9市府。利用するコンテンツや授業内容などは、それぞれの自治体が考え、研究・実証していく。規模も、すべての府立高校と養護学校で取り組んでみたいという府もあれば、2、3の学校でという市、全小中学校で取り組みたいという市もある。
 推進体制として、ソフトメーカー、ハードメーカー、ネットワーク事業者など80社が参加しているEduMart協議会に加え、10程度の自治体の連絡会として自治体アクセス網教育利用連絡会(仮)を設立する。
 コンテンツ流通の方法も、自治体とネットワーク事業者などの話し合いにより様々な方法が試みられる予定。例えば、地域イントラネット内の教育センターにコンテンツ配信サーバを置く方法やコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)事業者の配信サーバに直接アクセスする方法、などが考えられる。
 コンテンツ流通のかなめとなる課金の方法も、自社コンテンツを民間事業社の配信サーバに搭載して事業者の機能(課金・認証)を利用する方法や、自社コンテンツを自治体センターに設置して配信、など複数の課金の方法が実証される。ただ、コンテンツ搭載時ではなく、利用に応じて課金されるのはどの候補地も同じ。これらは、著作権保護・著作権管理、個人情報管理ともリンクして試みられる。
 また、利用者サイドからは、学習指導要領に対応した検索や検索したコンテンツの豊富な閲覧性、豊富な活用例の閲覧性、自身で作成したコンテンツの登録、なども実証される。さらに、教育情報ナショナルセンター(NICER)がコンテンツ流通のハブの一つとして機能することも支援される。
 実証実験は、設備の調達がWTO(国際競争入札)にかけられるため、実際に開始されるのは秋以降。授業の中で活用されるのは、来年度になると予想される。
 「NHKのコンテンツも持ち込まれるので、相当数のコンテンツが教育現場で利用できるようになるだろう」(大橋室長)という。

(2002年6月1日号より)