海外の情報化を報告
教員用PC補助に成果



 社団法人日本教育工学振興会の主催による教育工学セミナーが1月23日に開催。「英・仏・独における教育の情報化の現状」をテーマに、国立教育政策研究所の清水康敬・教育研究情報センター長の講演が行われた。
 日本教育工学振興会が毎年秋に行っている、第11回海外教育事情調査の報告をかねて開かれたもの。清水氏は第11回調査で訪問した小学校などの情報化の状況を説明しながら、英、仏、独それぞれの教育の情報化の特徴などを語った。
 それによると、イギリスには教員養成委員会(TTA)があり、宝くじ予算年間2億3000万ポンド(約350億円)を使って教員研修を行っている。また、教育水準局(OFSTED)が、6年ごとに授業内容の質、財政管理面などについて学校を監査している。さらに、英国教育教材協会(BESA)には230社が加盟、展示会の開催などを行っている。また、教員のそれぞれのレベルに応じた研修教材を大規模に開発している会社もある。
 一方、ドイツは2001年10月に全3万5000校のインターネット接続を完了したという。ドイツテレコムによる接続料負担(3万4000校)が大きな役割を担っている。
 以上は第11回調査報告の一端だが、これとは別に清水氏はブリティッシュ・カウンシル主催のコンファレンスに参加し、英国のコンピュータ教育総合展「BETT」も視察。その内容や訪問で得た資料なども報告された。BETTには、教育関係団体が非常に広いスペースを取り出展、また教員の研究会もまとまって出展していたという。展示会の中で、エステレ・モリス教育技能大臣の基調講演があり、「教員の役割が重要である。教員のコンピュータ所有にも投資している」「ICTで学力は間違いなく高くなっている。我々はもっともっと学力を伸ばさなければならない」と語ったという。それは、OECDの学習到達度調査でも証明されている。英国のICT教育は1988年にナショナルカリキュラムが設定されて以来、系統だって行われ、日本に比べ早くから取り組まれ歴史が古い。
 表12は、英国DfESによる調査。電子メールアドレスは、小学校教員の53%が、中学高校の教員の66%が個人のアドレスを所有している。児童・生徒の個人用アドレス所有状況でも小学校は17%と低いが、中学高校では66%が所有している。表2で教員のICT活用について、「教科指導に自信あり」が7割を超えている。表3はNGfL(全国学習網〈日本の教育情報ナショナルセンターにあたる〉)による調査で、教員用コンピュータ補助の成果が見て取れる。コンピュータを校務に毎日使う教員の割合は、以前は20%だったが2001年7月には倍以上の48%に上昇。教科指導に毎日使う割合も、20%から49%に上昇している。
 以上を説明しながら清水氏は、「コンピュータを教員1人ひとりが所有するように補助する施策は非常に重要である」と指摘した。
 また、生徒のICT学習機会が増えれば増えるほど、態度や行動においてレベル4を超える生徒の割合は増加。教員のICT知識が高くなればなるほど、生徒のICTスキルに対する興味や努力度、達成度も向上するという調査結果も報告された。



(2002年2月2日号より)