Eスクエア・プロジェクト 成果発表会に熱気
延べ2600人が参加
インターネットの教育利用のノウハウの共有などを目的にしているEスクエア・プロジェクトの2年目の成果発表会が3月2、3日と2日間にわたり東京ドームホテル(東京・文京区)で開催された。今年は、学校におけるインターネット及びコンピュータの教育利用の広がりを背景に、2日間で過去最高の延べ2600人(実参加者数1700人)の教師、教育委員会関係者、企業関係者が参加した。
基調講演では、佐伯胖・青山学院大学教授が「インターネット時代の学びは、学び合う共同体作りを」「コンピュータ離れを作るインターネット学習が必要」と言及。また、教科教育、情報教育・情報リテラシー、地域の情報科、国際交流など8分科会では、合計52の発表が行われ、日頃の実践の積み重ねや情報教育の推進策が生の声で討議された。パネルディスカッションは、「インターネットの教育利用をどう推進するか」をテーマに、赤堀侃司・東京工業大学教授がコーディネーターとなり、4人のパネラーが貴重な提言を行った。
基調講演では、佐伯胖・青山学院大学教授が、学びの価値観の転換を提言。学ぶ意義の分からない学び、地域社会・共同体と関わりのない学び、点数を取るための注入主義の学びは破綻しているとして、「学びをインタラクションにする必要がある。学び合う共同体作りを強調したい」と提唱。そして、「知は、物、人とのインタラクションがあって、知力になる」「改めて、生きる力とは何かを考える必要はない。学びを本来的なものに取り戻せば、生きる力の教育になる」と知と子どもとの関係を位置づけた。そして、インターネット時代の学びは、「コンピュータ離れを作るインターネット学習が必要。歩き出して、部屋を出ることを最終の目的にして頂きたい」と言及した。
パネルディスカッションでは、コーディネーターの赤堀侃司・東京工業大学教授が、日本におけるインターネットの教育利用の先駆けとなった平成6年度からの100校プロジェクトの種が今、4万校に広がろうとしている、として、「広場という意味のあるスクエアに集まって知恵を出し合って、どう解決していくかが問われている」と言及。それを受け4人のパネラーが4万校にノウハウをいかに広げるかについてそれぞれの立場から提言した。永野和男・聖心女子大学教授は、永野教授が中心となって取り組んでいる情報教育の目標リストの作成や約100コースの授業モデル案を作成していることを報告。大島克巳・三鷹市教育委員会指導主事は、三鷹市におけるモバイル端末の教育への活用や学校と家庭を結ぶ地域イントラネットについて、宮澤賀津雄・早稲田大学IT教育研究所は、米国では情報教育を含めた各教科の教育内容の一覧表が保護者に配布され、保護者が進度を把握できるようになっていること、前田真理・広島市立白島小学校教諭は所属するNPO法人「中国・四国インターネット協議会」(CSI)の活動について報告した。
分科会で多様な発表
分科会では、Eスクエア・プロジェクトの「先進的情報技術活用プロジェクト」で開発された、ネット社会を「安全に、楽しく」歩くための教材「ネット社会の歩き方」について清泉女学院中学高等学校の土屋至教諭が発表。同教材は14テーマ20個の学習ユニットで構成され、アニメーションや仮想電子ショッピングサイトでの買い物を通して、「インターネットを利用する場合に気を付けるべき事柄やインターネットの便利さ」を身につけられるようになっている。Web上に体験型の教材が設けられ、注文個数を間違えて注文、など実際に被害にあって学んでいく。
Web上で学習指導案も公開している。この教材を利用して、様々な学校で安全教育が行われている。生徒の感想も見ることもできる。
http://www.net-walking.net/
キッズスペースファンデーションの小中学校教師向け「インターネット安全教育ガイド」は、過去の事例252点を調査・分析して、ネット上の危険と対策についてCD−ROMにわかりやすくまとめたもの。現場で役立つ安全への提案や参考資料、指導内容に応じて事例を取り出せるデータベース検索などが用意されている。
こうしたキッズスペースの取り組みについて、米国からかけつけたキッズスペースファンデーションの大庭さち子氏が発表した。
「へき地小規模校の児童の主張性向上プロジェクト」は、内向的である、コミュニケーション力に欠ける、と言われるへき地小規模校の宮城県嵯峨立小学校の児童に、テレビ会議システムを活用して他校と交流することで、話をするスキルの向上や積極性を培おうとした。3回という少ないテレビ会議の利用だったが、児童は自分たちの話の仕方を能力として捉えることができるようになり、自ら進んでアナウンスの仕方を勉強する講習会に参加するようになっている。
岐阜大学教育学部附属中学校では、「総合的な学習『心の書』」の作成を実践している。毛筆で書いた『書』を展示ケースに入れて、その脇にパソコンの文字で「めざす言葉」を貼り付ける。そうして作った『心の書』をデジタルカメラで撮影し、Web上の作品データベースに登録し、保護者からも生徒の作品が見られるようにしている。
データベース化については、検索機能が充実し掲示板としても活用できる「イントラバケッツ」を利用。家庭でもイントラバケッツをインストールし、作品を見られるようにしている。
「総合的な学習と情報コミュニケーションの相互作用に関する実践研究」は、国内の複数学校や海外日本人学校と協力して食文化を主軸に交流学習を行ったもの。各校で課題解決学習を行い、地域の人材を地域の先生として、学校に招いた。中心となったのは、山辺町立鳥海小学校と長岡市立表町小学校。交流プロジェクトの中で、調べ方を学び調べ方を共有する。国際交流、環境調査、活動の種類は何であれ、その中で、教育目的を明確にして、取り組むことが大切だと言う。
(2001年4月7日号より)
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