定点観測システム立ち上げ
  
全国10ヶ所をむずぶ

 インターネット時代の学校教育に対応するため、文部科学省の平成12年度予算で「教育用コンテンツ開発事業」として、開発を委嘱されていた10件のうち、「定点観測システム」が完成した。同システムは、全国10か所に「電子百葉箱」と「景観カメラ」が1ユニットとなった観測装置を設置し、気温・気圧・雨量・風速などの気象データと10分ごとの定点撮影写真がインターネットでリアルタイムに提供されるもの。「全国の子どもたちへの教材提供」が目的で、これにより気候の比較学習が容易にできるようになり、子どもたちの理科への興味を高めることができる。日本にはインターネット上のコンテンツがまだ少ないが、これで世界に誇れる学習コンテンツの1つができたのではないだろうか。このコンテンツは文部科学省の事業により、今後3年間無償でインターネット上で提供される。

将来的には、日本だけでなく世界が視野に入れられているが、現在、北海道、青森、岩手、宮城、福島、新潟、滋賀県の10か所(写真参照)に観測地点が置かれている。各地点の大学、小学校、公共施設など建物の屋上には、気温、湿度、雨量、気圧、風向、風速を計測する「気象センサー」と景観や植物の画像を撮影する「定点カメラユニット」が設置され、気象データは5分ごとに、定点撮影画像は10分ごとに自動取得されている。そして、その気象データや画像は、インターネットのホームページ「TEITEN2000 ORG」(http://www.teiten2000.org/)でリアルタイムに提供されている。

 学習者はホームページ「TEITEN2000 ORG」から、刻々と変わっていく各地の風景画像はもちろんのこと、各種のデータを得ることができる。学習キットが用意されているので、データの取り出しや比較も容易にできる。また、各種気象データの一覧表示とデータのファイル保存も可能だ。

 例えば、各地点の好みの年月日の朝(6時)、昼(12時)、夕方(18時)の天気のようす(写真)、1日あるいは1年の気温の移り変わり(グラフ)、任意の2地点の気温差(グラフ)、2地点の日照時間、日の出・日の入りの時間の比較(グラフ)、同一地点における月ごとの日の出・日の入りの時間の推移(グラフ)、晴れた日と雨の日の気温の変化(グラフ)、好みの年月日の好みの地点の1日の景観画像(1時間ごとの写真)、各地の1日の気温、湿度、降水量、気圧(以上グラフ)と風向・風速(表)、任意の4地点の気温や湿度の比較(グラフ)、各地の1日の景観の動画再生、などができる。

 このシステムは、「広域定点観測網実証コンソーシアム」(代表=酒井創・福島学院短期大学、文部科学省同事業企画委員=渡部昌邦・福島県教育庁、内田洋行など)が開発したもので、昨年9月から11月にかけて上記の10か所にシステムを設置し、実証を重ねてきた。さる2月7日から17日にかけては、観測地点の1つである大津市立瀬田小学校で同システムを活用した3回にわたった授業が行われ、また、2月16日には岩手県花巻市立湯口小学校と水沢市立真城小学校で研究授業が行われた。

 「このプロジェクトの成果をすべてシェア(共有)できるようにするのが私たちの望みであり、全国の子どもたちへの教材提供が目的」で、今後の展開として「この定点観測システムが横断的・縦断的・メッシュ状等に広域へ配備されることにより、各地点における定点観測データがインターネットを利用してリアルタイムに共有される」と広がりを意図している。今後、全国各地、さらには日本人学校などに観測地点が拡大すると、一層すばらしい。
 あなたの学校も参加してみませんか。

 問合せ=info@teiten2000.org

〈教育用コンテンツ開発事業〉
ネットワーク提供型の学校教育用コンテンツの開発及び成果の普及を図ることを目的に12年度からスタートした事業。学識経験者、教員、企業などからなる10チームに委嘱され、各教科や総合的な学習の時間などに即した教育用コンテンツを開発している。平成12年度の予算額は2億2000万円。13年度は2億1600万円。

(2001年3月3日号より)