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世界食糧計画作成の
パソコン用ゲームで遊んでみた

 国際連合の一機関である世界食糧計画(WFP)が、飢餓救済と人道援助をテーマに、パソコン用ゲーム「FOOD FORCE」を制作した。ゲームを通じ、世界の飢餓の現状について知り、学んでもらうことを目的としている、とのこと。今回は、このゲームで遊んでみた。

 日本語リリース→http://www.wfp.or.jp/pr/data/222_index_msg.html

「FOOD FORCE」が公表、配布されたのは、4月14日にイタリア・ボローニャで行われているブックフェアという事だが(このニュースソースはCNN:http://www.cnn.co.jp/science/CNN200504150026.html)、現在はダウンロードサイトからの入手ができる。

ダウンロードサイト:http://www.food-force.com/

ダウンロードサイトの名前は「FOOD FORCE」。そのまんま。日本語ページは用意されていないが、ダウンロードできるリンクは分かりやすく表示されている。簡単にダウンロードを行う事ができるだろう。ゲームはWindows版とMacintosh版とがある。

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(ff1:ダウンロードは画像下部中央にある「THE GAME」をクリックして行う)
ダウンロードサイトが英語しかないところからも分かるが、この「FOOD FORCE」、現時点では英語版のみしかない。しかもゲーム操作法解説などの英語は音声で入っており、表示されている単語を調べながら先に進めるということはできない。

ただ、あまり難しい英単語も使われていない。これは、ゲーム自体の対象年齢は8歳から13歳だからだろう。英語の学習として使用できるレベル。「文章が短い」「発音が明確」「単語が簡単」などの理由から、普通の英語リスニング教材としても使えそうだ。

ダウンロードしてきたファイルを実行すると、インストールが始まる。

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(ff2:インストール画面。ごく一般的なインストール手続き)
指示に従って、インストール設定を行う。設定が分からなければ、[Next>]ボタンを押しつづけるだけでもインストールはできる。(最後は[Finish])

 このゲームは、WFPの行っている仕事内容をシミュレートしてある。しかし、あくまでも「ゲーム」であり、対象年齢である8歳から13歳が楽しく遊べるよう、バランスが取ってある。マウスだけでゲームはできるようになっており、複雑な操作は必要ない。

WFPに成り代わってこなさなくてはならない仕事(ミッション)は全部で6つある。以下、WFPの公式紹介文と、実際のゲーム内容の解説とをゲーム画面と共に並べておく。


ミッション1

  AIR SURVEILLANCE (空からの監視)

【公式紹介文】
ゲームの舞台となるSheylanでは、相次ぐ干ばつと内戦により、多くの人々が安全と食糧を求めて避難を始めました。
そこでWFPは、彼らを救うため緊急食糧援助を開始します。まずは、現地の査察です。
プレーヤーは、制限時間内で現地に着地し食糧援助を必要としている人の人数を数えるため、航空機を操縦し、空から監視を行います。

ff3(ff3:ゲーム前に、WFPの活動に即した状況説明の動画が入る。この画像はミッション1のもの)
【ゲーム内容解説】
ヘリコプターを操り、マップに点在している避難民の集団を探すというもの。実際に操作するのはサーチライトで、サーチライトの方向にヘリコプターが動くようになっている。ボタンをダブルクリックすると、ターボがかかり、ほんの少しの間早く動ける。

(ff4:ミッション1。避難民集団にサーチライトが触れると、赤丸でチェックが入る)


ミッション2
  ENERGY PACS (エネルギー補給用援助食糧)

【公式紹介文】
食糧援助では、栄養のあるバランスのとれた食糧を提供することが重要です。
そこでプレーヤーは、一定の資金制約の下で、小麦や豆、食用油などの様々な材料を上手く組み合わせて、栄養のあるバランスのとれた食糧を作ります。

【ゲーム内容解説】
5つの食料を組み合わせて、予算内でバランスのバランスの取れた食糧を作り出す。それぞれの筒の下の方にある黒(に白い線が入っている)部分をドラッグすると、上下に動かせるようになる。

上に動かすと、その材料の使う量を増やすことになる。下に動かすと、その材料の使う量を減らす事になる。それぞれの材料を増やすには、お金がかかる。規定のお金内で、全ての材料から取れる栄養のバランスを取ることが必要になる。

十分な量に達した材料は白い線が緑に光る。5つの筒の白い線を全て緑に光らせるようにそれぞれの量を調整することになる。

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(ff5:ミッション2。5つの筒に、それぞれの食糧が入っていく)

ミッション3
  AIRDROP (空中からの食糧投下)

【公式紹介文】
WFPは、陸路、海路あらゆる輸送路が遮断されてしまった場合に、人々へ食糧を届ける最後の手段として空中投下による食糧援助を行います。
プレーヤーは、貨物航空機から目的地へ食糧を投下します。

【ゲーム内容解説】
2回のクリックを繰り返すだけの単純なゲーム。
1回目のクリックは、クリックの指示がきたら行う。この指示に合わせてクリックしないと、食糧が落とせない。
2回目のクリックは、2つの動く矢印(緑色は落とす方向を示す。青色は風の方向を示す)を良く見て行う、この二つを睨みつつ、出来るだけ中央に落とすようにするのがポイント。

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(ff6:ミッション3。今、まさに食糧が投下されようとしているところ)

ミッション4
  LOCATE AND DISPATCH (食料の調達と搬出)

【公式紹介文】
WFPの食糧援助は、全て寄付金に基づいています。そのため、寄付金を有効に運用し、短期、及び長期の食糧援助の需要を満たすことが重要です。
そこでプレーヤーは、ロジスティックスパズルを解き、今後6ヵ月間の食糧供給網を完成させます。

【ゲーム内容解説】
簡単に言えば、ジグソーパズル。6カ月×3材料の18マスを埋めるのが目的。世界地図のそこかしこにピースが発生するので、ドラッグしてマス上に持っていく。上手く選んで埋めていくこと。埋めてしまったマスは外す事はできない(たぶん)。重なってしまうピースは置けないので(例えば、MONTH3のOILが埋まってしまっていたら、その部分を持つピースは置く事ができない)ので、よく考えながらピースを置いていく必要がある。

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(ff7:世界各地から食糧を運ぶ。ピースは発生しては消え、消えては発生する)


ミッション5
  THE FOOD RUN (食糧の輸送)

【公式紹介文】
Sheylanに届けられた食糧は、次に食糧援助を必要としている人々のもとへ運送されます。
そこでプレーヤーは、多くの危険と困難を乗り越えて、トラックで食糧を現地の人々へ届けます。

【ゲーム内容解説】
トラックを走らせるゲーム。実際に動かすのは矢印。矢印の方向にトラックが走ってくるといった感じだ(ミッション1のサーチライトとヘリコプターの関係と同じ)。道なりに走っていくと、イベントが起こる。道の選択(「Left」「Right」)をしたり、トラブルが発生したり(橋が今にも落ちそうだ!! など)するので、適宜対応しよう。

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(ff8:トラック野郎。トラックが2台見えるが、実際に矢印に反応するのは1台目)

ミッション6
  FUTURE FARMING (将来の農業)

【公式紹介文】
食糧は人々のもとへ届けられ、これによってようやく緊急事態は過ぎ去りました。
そこでプレーヤーは、現地の人々が自ら食糧を確保し、自分たちの生活と地域を自分たちの力で立て直すことができるよう、成長と開発のためのプログラムを行います。

【ゲーム内容解説】
5つの場所(生活する上での機能を示している)に、資源を置いていく。置いていくたびにそれぞれの場所は発展していく。発展度合いは、画面右側のグラフに表示されている。
このグラフが伸びていくと、一番下にあるグラフ「HAPPINESS」が増える。この「HAPPINESS」を向上させるのが目的。

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(ff9:資源は画面右上にある。ほとんど何も考えずに均等に置いていっても大丈夫。時折表示されるメッセージには気を配っておこう)
この6つのミッションが終わると、ゲームはおしまい。6つのミッションの点数を合計した総合得点が表示される。この得点をダウンロードサイトである「FOOD FORCE」で公表・他のプレイヤーとの比較ができるという仕掛けもある。

【その次の段階へ 〜 ゲームを足がかりとして使用する】

「FOOD FORCE」は、携帯型ゲーム機に良くあるタイプのミニゲーム集といってもよいだろう。簡単なゲームがいくつも入って、ゲーム全体を構成している。

ただ、先ほども述べたように、WFPの活動に即した状況説明の動画が入るなど、「WFPの装い」が全般に施されていて、WFP活動の知識などがゲーム中にするりと入るようになっているところは面白いところ。WFP自体の描写が必要以上にハリウッドのアクションムービーっぽく「正義のヒーロー」然としているのは、まあ、ご愛嬌。

しかし、日本でこれを使う場合、これだけで終わらせるのは難しい。小学生の場合は、英語が少し難しいから使いにくい。英語の難易度として、中学生後半〜高校生前半くらいが良いと思うが、にしては、内容そのものが少し簡単すぎる。

その場合、導入として使うという手も考えられる。難民や発展途上国への経済援助は、いくつもの難しい問題を含んでいる(ネットで閲覧できる文書として、例えば、山本芳幸「援助プロジェクトについての覚書」http://www.i-nexus.org/yoshi/worksJ.html)。こういった、さらに込み入った問題への導入として、このゲームを用いるのであれば、中高生だけでなく、大学の経済学などのゼミでも使用できるかもしれない。

現実における複雑な事実を理解したい時や、難しい問題を考えたりする時の前置き・全体像の把握として、とっつきやすい「ゲーム」という媒体を利用するのは、悪くない選択肢だろう。「FOOD FORCE」のように、一定の知識の伝達を目的としたゲームでなくても、同じようなことはできる。要は、それをどう利用して、学習を先に進めるかにかかっているといえるだろう。(榊原