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功成り、名を上げた人は、教育をどう考えるか?
井深教育対談アーカイブ

井深大。世界のソニーを作り上げた創業立役者の一人(のっけからわき道にそれるが、創業時の社長は前田多門氏。玉音放送2日後に作られた東久邇宮内閣で文部大臣を務めている。井深氏の義父)。

氏は、教育、特に幼児教育に一方ならぬ興味を持っていたことでも知られている。氏は、各界の著名人と教育について対談を行い、『幼児開発』誌に記事として掲載していた。その記事のアーカイブが、現在ソニー教育財団のウェブ上で閲覧できるようになっている。

井深対談
http://www.sony-ef.or.jp/lib_ibuka/ibuka_log.html

現在掲載されているのは、9人との対談を書き起こしたもの(肩書きは対談当時のもの)。例を挙げると、

○才能教育研究会 創始者 鈴木 鎮一氏

・教育の飢餓状態に
・生まれた瞬間の大切さ
・能力の法則とは

 鈴木メソッドの創始者として著名な鈴木 鎮一氏との対談。鈴木メソッドは「こどもがやりたくてやりたくてしょうがなくなるまでやらせない(やることが当たり前であるという状態にする)」「小さいころに繰り返す修行を積ませる」「大人が難しいと思うことでも、こどもには難しくない場合がある。逆に大人が簡単だと思うことでも、こどもには難しい場合がある」などの方法論からなる(と僕は理解している)。
 鈴木氏から話は離れるが、この中で出てくる「3歳はもう大人ですよね」という井深氏の言葉が、氏の考え方を端的にあらわしているといえる。

○元 本田技研工業株式会社 社長 本田 宗一郎氏

・知恵の肥満児にならないよう

 解説の必要のないくらいの著名人、本田 宗一郎氏。「知恵の肥満児」という言葉は、キャッチとしても面白いが、本田氏の体験談を対談で読みつつ考えてみると、非常に奥深い。本田宗一郎のお茶目さぶりを知りたい人にもお勧め。はんこエピソード最高。

○東京フィルハーモニー交響楽団常任指揮者 大町 陽一郎氏

・きちんとしたあいさつから
・“ 風のなかの羽のように ” 憶えていた一歳の旋律

 大町氏がヨーロッパに留学しているときの体験を下にしつけ、教育について語っている。端的にいえば「ぶつ教育」でのしつけの重要性についてが中心。挨拶などの基礎的しつけについては、3歳までに「ぶつ教育」でしっかりと身につけさせておくべきだとする。
このあたり、意見の分かれるところだと思うが、意見の分かれるところだからこそ、突き詰めて考えるべきだろう。「体罰反対」という口当たりの良い意見だけに惑わされずにおきたいところ。

ソニー教育財団とはまったく関係のない調査だが、「挨拶をしない子」に挨拶をしない理由を聞いたところ、「家では挨拶をしてないから」。「挨拶をする子」に挨拶をする理由を聞いたところ、「家で挨拶をしているから」という結果があることは書き添えておきたい。


これらのほかにも、以下のような対談がある。

○国立小児病院名誉院長 小林 登氏
・人間と機械の違うところ

○国際教養大学 副学長 グレゴリー・クラーク氏
・”グリーン隊”のすすめ

○JT生命誌研究館 館長 中村 桂子氏
・母親の自信とゆとりを

○筑波大学名誉教授 村上 和雄氏
・深く広い自然の不思議

○株式会社林原社長 林原健氏
・100年単位のものさしで・・・

○NHKアナウンサー 桜井 洋子氏
・私を支える母の言葉


これら記事は、定期的にアップロードされ、どんどん増え続けているようだ。どれも一読の価値のある対談となっている。

もちろん、著名人だからといって教育に対して優れた見識や胆識を持っているとは限らない。しかし、著名になるだけのものはいずれの対談者も備えているはずで、この対談ではその片鱗をうかがう事ができる。それをもとに、考えるよすがとして利用したい(榊原