▲青少年を取り巻くITの状況を考えている調査や意見を考える
ITという文字が新聞に載らない日は無いという今日、青少年を取り巻く
ITの状況が気になる人たちも多いらしい。近頃、幾つかの「青少年とIT」や
「青少年と携帯」というテーマでのコラムや調査結果が発表された。ここで
まとめて紹介してみよう。
■青少年の意識・行動と携帯電話に関する調査研究報告書
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen16/keitaityousa.pdf
6月発表の警察庁調査。調査の主張概要をまとめると、
1)非行少年は、一般少年に比べ携帯を持っている率が高い(中学生)
2)非行少年は、一般少年に比べ、携帯を頻繁に使う率が高い
3)非行少年は、携帯代金を払うためにアルバイトをしている率が高い
4)非行少年は、出会い系サイトを利用している率が高い
5)非行少年は、携帯電話に依存性を感じている率が高い
など。
この調査結果を一見すると、
携帯を持っている→非行行動を取る
携帯に依存している→非行行動を取る
と携帯電話に原因があると考えてしまいやすい(し、実際にそう捉えやすいように書いてある)が、この調査では、「携帯電話が非行行動の原因だと証明されているわけではない」という事に注意しよう。
例えば、
親子のコミュニケーション不足→携帯で友達とのコミュニケーションを求める
親子のコミュニケーション不足→非行行動を取る
という風に、別の要因から2つの現象が同時に現れているのかもしれないという事には、十分に留意をする必要がある。その事を考慮した上で、参考の価値のある資料。
■言わせてもらいます「子供の携帯電話は不健全」未成年の禁止は無謀な考え方か
http://www.saitama-j.or.jp/~bugin/doc/mobilephone.pdf
上記の調査結果が出る前に、東京新聞に掲載されたコラム。未成年に対し、携帯電話を持たせるのは禁止すべきだ、という主張。こういう考え方もある、という参考に。
個人的な意見では、ここまで携帯電話が未成年に広がっている現状をベースにするのであれば、未成年の(携帯電話)禁止は無謀な考え方だと思いますと言わせてもらいます。
一番最後の段落にある、
引き篭もりの原因となっていたり、ひょっとしたら携帯電話の電磁波は体に悪いかもしれない。それが解明されていないだけだとしたら、「親がお金を払って子供の心身の病気を買っている」ことになる。電話会社は、「家族割引」などの工夫をして子供にも携帯電話を持たせようと一生懸命だが、例えば「携帯電話が子供の心に与える影響」や「電磁波が脳に与える影響」などの社会的・医学的研究に収益の一部を使い、携帯電話を利便性だけでなく健康と安全に貢献する文明の利器に育てていく気持ちが大切ではないかと思う。
という段落の主張に、傾聴すべき点が多い。
■gooリサーチ結果 (No.60) 第2回 小学生のインターネット利用に関する調査
http://www.mri.co.jp/PRESS/2004/pr040621_ipd02.pdf
こちらは、インターネットの利用(PCから)に関する調査結果。ブロードバンドが広まってきており、インターネットの使用開始が低年齢化していることが分かったという調査。
■携帯電話でのゲームを半数以上が利用。携帯型ゲーム機との使い分けも定着 〜第9回携帯電話コンテンツ/サービス利用者調査結果より〜
http://www.mri.co.jp/PRESS/2004/pr040616_icd01.html
少し毛色が変わって、携帯用IT機器の代表、携帯型ゲーム機と携帯電話端末との利用者を調査した結果。若年層になるほど、携帯型ゲーム機と携帯電話端末を両方とも使っているという。
上とあわせて考えると、携帯端末を含めたIT環境が、若年層の回りに生まれたときから空気の様にして存在しており、何の問題もなく普通に使いこなしている。という状況が見える。
■ネットの優等生はケータイが苦手?
http://japan.cnet.com/column/tm/story/0,2000050611,20069279,00.htm
学内IT化の先鞭をつけた慶応大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)にいる、ネットワーク技術などのITに長けた学生は、高機能化した携帯電話端末の使用となると一般の学生よりもずっと不慣れ。IT世代の中でもジェネレーションギャップが起こっているのではないか? という主張のコラム。
このコラムの一文に、慶応の三田キャンパスの学生が
「話が盛り上がると1日の深夜までに200通のメールを送る事もあるそうだ。SFCの学生のケータイの中では絶対あり得ない量だ」
とある。
一番最初に取り上げた、「青少年の意識・行動と携帯電話に関する調査研究報告書」では、非行少年は一般少年に比べてメールを送る回数が多い、とある(非行少年は平均42.6回で、一般少年は平均30.5回)。しかし、「メールを送る回数が多い(携帯に依存している)→非行行動を取る」という論旨は急すぎるという事が、こうした例からも分かる。
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こうした青少年を取り巻くITに関する調査や、エッセイなどに託した意見の発表は、2002年「ゲーム脳の恐怖」(NHK出版)という書籍が発表された頃から、より盛んに行われるようになった(それまでも、何本も行われているが、この書籍の発売を境に、頻度が非常に多くなった)。
「ゲーム脳の恐怖」は、内容がセンセーショナルなだけに、話題を巻き起こした。覚えている人も多いだろう。ネット上では、この書籍に対する反論も多く巻き起こった。代表的なものに、
斎藤環氏に聞く ゲーム脳の恐怖
http://www.tv-game.com/column/clbr05/
がある。反論だけあって、ゲーム擁護側の立場でまとめたインタビューとなっている。どちらの立場で考えるかは、両方とも見比べて、ご自分で判断してください。
そうした流れで、今回233号のニュースでも取り上げた
社会技術研究システムにおける新規研究
「心身や言葉の健やかな発達と脳の成長」の研究開始について
http://www.jst.go.jp/pr/info/info85/index.html
の研究概要を眺めてみると、また、違った視点が得られるかもしれない(榊原)