普通教室で調べた結果をまとめる |
埼玉県深谷市立南中学校 |
PCや模造紙で 総合で国際理解テーマに |
埼玉県深谷市立南中学校で11月13日、研究発表が行われた。同校は校内LANが整備され、コンピュータ教室だけでなく、普通教室も無線LANでインターネットに接続できる環境にある。普通教室用のノートパソコン24台は普段は職員室に保管され、必要なときに職員室から持ち出して活用している。 1年生から3年生まで、各学年で公開授業が行われた。2年生は国際理解をテーマにした総合的な学習。「世界の諸問題」「世界の食文化」「スポーツ」などクラスごとにサブテーマを決め、さらに個人や2人から5人のグループで課題を設定して調べまとめ上げる。当日は、生徒たちは教室や多目的室、図書室、国際理解教室、コンピュータ教室などそれぞれの目的に合った部屋で課題を追求し、まとめの作業を継続した。まとめ方は模造紙やコンピュータソフトなど、様々。教室でノートパソコンを使っている生徒は、ごく普通にパワーポイントにまとめたりしている。「総合的な学習で良くパワーポイントを使っている」という。 3年生は理科室で選択理科。題材は「みんなで育てよう南中の樹」。各自が4月当初に校庭で気に入った「私の木」を決め、卒業までの1年間手入れや世話をし、その木の情報を残していこうというもの。各机に1台ずつノートパソコンが置かれ、教室前方脇にスクリーン。モッコクやハナミズキ、さざんかなどの「私の木」について、1人ひとりが教育用グループウェアソフト「スタディノート」にまとめた内容を、前に出てさりげなくプレゼンテーション。視聴側の生徒は、パソコンの画面やスクリーンを見て、感想を述べたり質問をした。 深谷市教育委員会研究委嘱校として13年度から研究に取り組んだ同校は、各学年・教科・単元ごとに想定できる情報機器活用一覧表を作成中である。 全教科領域で活用へ 4つの推進部を設置 研究主題は、「将来に生かせる豊かな創造性を育む指導の研究」。その研究を推進するために管理職を含めた研究推進委員会を置き、その下に全教職員からなる4つの推進部(「IT推進部」、「学習指導部」、「情報技術部」、「情報マナー部」)を作っていることに研究の特色があるようだ。 IT推進部が校内のネットワークシステムデザインを担当。校内LANを3系統に再構築したほか、職員室内LANに評価、教科書、通知、行事予定などの共有フォルダを作り文書の共有化を推進。また、プラズマディスプレイと半円形のテーブル、ノートパソコンなどを配した国際理解教室や、タッチパネルとデスクトップコンピュ−タを配しグループ学修や少人数指導を主目的とした2つの多目的教室など、多用な学習環境も創出。さらに、出席管理システムや図書検索システムも既存のソフトを利用して作り上げた。 学習指導部は、コンピュータの活用を各教科領域における年間指導計画に位置づけ。特に、技術家庭科、南風タイム(総合的な学習の時間)に基礎的な操作能力を習うスキル学習を位置づけ、生徒の活用レベルに応じ学年ごとの調整も行った。そうしたことにより、「コンピュータを利用した授業が圧倒的に増え、生徒も抵抗なく作業に入れるようになった」という。 情報技術部は教師の情報リテラシーの向上を担当。初・中・上級のグループ別に一太郎を活用したマルチメディア研修、パワーポイントを活用した実技研修、またEメール研修とスタディノート活用研修も行った。 情報マナー部は、総合的な学習のスキル学習の中に「情報マナーの基礎」を集中して位置づけ。また、道徳の授業と併せて学習することで認識を深化。さらに、技術科や英語、国語など各教科の中でもモラルの指導を位置づけ意図的・継続的に指導していくことで、マナーの定着を図った。 全体的にコンピュータの活用が増え、情報収集の過程で身につけた実践力より情報発信の過程で身につけた実践力の方がすばらしいものが見られるという。課題の1つは、生徒の意識に「調べ学習」↓PC・インターネットという安易な思考回路が出ていることだという。 同校では継続的に生徒を対象にした調査を行っている。「パソコンを使った学習は好きですか」の質問に、平成13年6月と14年10月実施の調査を比べると、「嫌い」が7・8%から3・8%に減り、「好き」が46・5%から54・3%に増加した。また、「コンピュータ等を使った授業のよい所はどんなところですか」の質問に対する主な変化を見ると、慣れて来たためか「楽しく取り組める」が42・1%から40・6%へと若干減り、「わかりやすい」が18・7%から21・5%に増えている。 斉藤茂指導主事は講評で、今後は小学校と中学校の指導の系統性も考えて行かなくてはならないとして、「中学校は単なる体験レベルから知恵のレベルに高めていく必要がある」と指摘した。 |
【2002年12月7日記事より) |