全国学校保健大会、千葉市で開催
21世紀の大会に期待 実践力養う健康教育を
全国学校保健研究大会の主題として「生涯を通じて、心豊かにたくましく生きる力をはぐくむ健康教育の推進」というテーマを設定していますが、新指導要領の中でも「生涯を通じて自己の健康を管理し改善していく資質や能力を育てる」を掲げており、教育課程の改訂で目指しているものと全く共通のテーマを掲げています。
今大会の全体会では、薬物乱用防止教育をテーマにシンポジウムを行います。薬物乱用防止教育は世界的にも極めて重要な課題であり、新学習指導要領の中でも小学校で初めて盛り込み、中学校、高等学校はそれぞれ内容をバージョンアップしています。そういうこともあって、今回メインのシンポジウムを行うこととなり、医師や、弁護士、ライフスキル教育の第一人者や中学校長に参加いただき、幅広い観点から薬物乱用防止教育について考えていきます。
課題別研究協議では、新学習指導要領を踏まえたこれからの健康教育のあり方を考えます。新指導要領で示しているものは、教科の保健を核にして特別活動で日常の具体的問題について実践的に学習し、総合的な学習の時間などで自分なりの課題を設定して、課題解決をしていくというものです。課題解決をする際、学校や教室の中だけでなく、地域に出たり、コンピュータを活用するなど、いろいろなやり方で自分なりに課題を深めます。
これまでは、保健の学習というと、医学的な用語や心理学的な用語を覚えて、評価しているような傾向がありました。しかし、知識の暗記をさせたところで、子どもたちが健康に良い生活を実践する力には結びつかないことが分かってきました。理屈がわかっても実践力が身に付いていない。それではいけないということで、知識・理解の育成から実践力の育成へと大きく教科観を転換しました。
例えば、薬物乱用防止についても、薬物乱用は健康に悪いことということは知識として知っていても、乱用してしまう場合がある。それが健康に良いか悪いかを知っているということではなく、むしろ心理社会的な要因が重要になってきます。
孤独感や孤立感を持っている子どもが、ある時に誘われて始めてしまう。そこでブレーンストーミングやロールプレイングなどの学習やトレーニングをすることで断り方や誘惑に負けない実践力、適切な意志決定や行動選択ができる力を身につけることが大切になってきます。実践力に役立つ力を養えるような教育内容、指導方法を工夫しましょうというものです。学校で学習したことがきっかけとなって、生涯自分の健康について考えられる力を身につけて欲しいと思います。
大会の主題である「生きる力をはぐくむ」ということは、健康を保持増進するための実践力を養うことと一致します。子どもたちにどのようにアプローチし、それに対して子どもたちがどのような反応をしたか、そういった成果や課題を課題別研究協議で明らかにしてほしいと思います。参加者の先生方は、成果については各地域や学校で生かしてもらい、課題については、改めて自分の学校でどのように解決するかということを主体的に考えてもらいたい。この大会をそういうきっかけ作りにしてもらいたいと考えています。
21世紀最初の大会ということで大いに期待しておりますし、有意義な実践の発表と研究協議が行われることを期待しています。これからの21世紀、百年の大計を見通す大会になればと思います。
(2001年11月10日号より)
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