教育家庭新聞・健康号
TOP健康教育食育・食の情報   バックナンバー
【食育実践紹介】
わかめの原藻使って食育
触れて 食べて 調べた
年間テーマ「野菜」の一コマ
東京・荒川区ひぐらし小学校

  「何だかヌルヌルしている」、「磯のにおいがする」…大人でも普段はあまり目にする機会のない、取れたてのわかめの原藻に手を触れて、子ども達は感激して感想を言い合った。「野菜を食べて健康づくり」を年間のテーマに掲げる、東京都荒川区立ひぐらし小学校でこの日、学校栄養職員・宮島則子先生の指導による5年生の食育授業が行われた。

◇ ◇ ◇

栄養を知る
  事前学習


はじめてわかめの原藻に触れた子どもたち
はじめてわかめの原藻に触れた子どもたち
 単元名を「わかめは海の有機野菜! 調べて なるほど わかめの健康パワー」と題して、荒川区立ひぐらし小学校(春原勝次校長)の5年生2クラス・59人が、わかめの健康機能などを学習。実際のわかめや海藻を使いその特徴などを、実験を通じて学んだ。

 子どもの発達段階に応じて、学年ごとに食育のテーマを設定。食育年間計画に沿って、総合的・継続的な指導が行われている。1・2年生はまず前段階として、栄養バランスなど「食べること」についての話。3年生はおやつ、4年生は朝食について、5年生は野菜、6年生は果物と、どの学年も「生活習慣病を防ごう」を共通の課題として、一年間かけて取り組んでいる。

食物繊維が
  豊富な和食

 「わかめの健康パワーって何だと思いますか」という宮島先生の問いかけで、授業は始まった。ボードに「生活習慣病」と書いたパネルを貼ると、子ども達からは次々と「がん」、「脳卒中」、「心臓病」などの答え。すでに繰り返し学習してきた範囲で、子ども達にはお得意の部分。

 「日本人の3大死亡原因であるがん、心臓病、脳卒中は3大生活習慣病とも言われ、がんは30万人、脳卒中が13万人、心臓病では15万人、この3つの病気だけで年間58万人が亡くなっています」と現状を説明。続いて「皆さんが住んでいる荒川区の人口は何人位だと思いますか」と問いかけた。

 子ども達が思い思いに発言する中、「正解は約18万人です。3大生活習慣病のどれか一つだけでも、荒川区の人々が全部いなくなってしまうくらいの規模で、大変なことですね。今のままの食生活を続けていたら、あなた達が大人になった頃にはもっとすごいことになっているかもしれませんよ」と喚起した。

 「わかめの健康パワーとは、野菜と同じ、ビタミン、ミネラル、食物繊維です。今まで学んだ野菜の健康パワーとあわせて、毎日の生活に役立てて生活習慣病を防いでください。今日は皆のために、わかめの実物を持ってきていただきました」とつなげた。

初めてのわかめの
  触感に感動の声

 この日の授業には、わかめの原藻やその他の海藻類の実物や資料を、理研ビタミン(株)がサンプル提供、宮島先生の指導をサポートした。

 「わかめは2月から4月、ちょうど今頃が旬の時期で、海から収穫されます」。ランチルームの真中に置いたたたらいの中には、全長4メートル余りのわかめの原藻。前日、収穫されたばかりのわかめを宅配便で直送したものだ。

 子ども達は次々に触れ、異口同音に「ヌルヌルしてる」。「このヌルヌルが、野菜の食物繊維と同じ。水に溶けた食物繊維です。腸の中を掃除してとり過ぎた塩分、脂肪分などを排除してくれるのです」。

さあ食べてみよう!」
  トロリと糸引く食物繊維

4メートルの原藻を
大人3人がかりで引き出した
4メートルの原藻を大人3人がかりで引き出した
   食物繊維の働きは、野菜の健康パワーを調べた時に勉強済み。「サツマイモの食物繊維と違って目に見えないけれど、わかめには水溶性の食物繊維がたくさん含まれています。食物繊維をしっかり摂ることで、血液がサラサラになり、生活習慣病の予防になります。他にどんな海藻を知っているかな」と宮島先生が問いかけると、こんぶ、もずく、ひじき、などの名前が挙がった。

 わかめの色やにおいにも関心をもってもらおうと、葉体部分をカットしただけのわかめを、熱湯につけて色の変化を班ごとに観察。見る間に褐色から鮮やかな緑色に変化するのを間近に確かめ、子ども達は歓声を上げた。

 「さあ食べてみましょう」と声をかけられると、慎重に口に運ぶ子、思い切り良くほおばる子など。「歯ごたえがあっておいしい」、「ゴリッとしている」、「味がない」、「くさい」など反応も様々だった。
 この間、めかぶを水につけたビーカーから引き上げると、食物繊維が透明の液体となって水に溶け出し、トロリと糸をひいていた。


目と鼻と手
  舌でも確認

 加熱していないわかめの食感を確かめた子ども達は次に、めかぶ、くきわかめの食感も味わった。今度は好みのドレッシングで味つけしたところ、トレイに盛られた海藻はまたたく間に売り切れ。一緒に指導していた学級担任や他の先生、授業を参観していた保護者からも「おいしい」、「これならいくらでも食べられる」などの声があがった。

 授業では海藻の現物の他、理研ビタミン(株)が食育をサポートする目的で発行した「海藻ミニ百科『わかめで元気』」を資料に活用。わかめの誕生から収穫までの生育歴、わかめの産地、日本人の食生活とわかめの関係、わかめの健康機能などが紹介された。

お湯につけるとわかめは鮮やかな緑色に
お湯につけるとわかめは鮮やかな緑色に


【2005年3月19日号】


新聞購読のご案内