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■小学生を変える
中村先生は地産地消を熱心に進める愛媛県今治市に招かれ、市と連携して、総合的な学習の時間を使って、子ども達から食事を変えるプログラム作りに取り組んでいるところ。そこでは日本の農業について学ぶ、小学校5年生に焦点を置く。大学生の食事調査を示すと、衝撃を受けるという。なぜなら子ども達は漠然と「大人になれば、ちゃんとしたものを自然と食べられるようになる」と考えがちだから。「ちゃんと学ばなければ、大学生になってもこんな粗末な食事になってしまう」と伝えることで、学習への真剣さが増すと言う。
プログラムが目指すのは、1生活習慣病を防ぐ和食の大切さを知る、2地場産物を使った食事をすることが安定自給になる、3自分で買い物をする技(安全・安心の知識)を知る、4調理の技術を身につけるなどによって、いい食事といい排便の関係を知ること。
3日間の理想の食事作りにも挑戦した。授業で作成した、米や地元の旬の農産物を使った、和食中心の理想の献立にそって、自分で買い物、家族のために調理した。
始めた頃は「地場の農産物を使った和食は私たちの命を守る」と言ってもほとんど理解できなかった子ども達が、終わる頃にはきちんと理解。結果が見えるプログラムなら行政が予算化しやすい。継続の筋道がみえることが大切だと強調した。
〈9月8日第22回JA全中「ライスミーティング」を基に構成〉
■100万人が
おかわりする日
食に関する教育は、誰の目にも見える変化や成果をあげてこそ、評価され予算化される。継続され地域に広がることで、本当の意味で子ども達の食への意識や食生活の改善・向上につながる。一部の熱心な先生の頑張りだけでは続かない、という中村先生の指摘は、なかなか刺激的で今後のあり方にも示唆に富むものだった。
学校の食育は今後、もっと実践的で、消費者・生活者としてのより確かな知識と技能が身につくことが求められる。「和食は健康食である」、「生産者の顔が見える地場の産物こそ、安心・安全な食品である」と知っても、自分や家庭の食事を変えていく“行動”につながらなければ“成果”にならない。それには買い物や調理の、知識より“知恵”が求められる。
雑な例えになるが、食農教育が成果を上げて全国の小学校1学年全体の食行動が変わるだけで、100万人の消費者が米や農産物を「もっと食べたい」と言う日が来るかも知れない。
■食育 食教育 食農教育
その違いは
「食育」、「食教育」、「食農教育」について福岡教育大学・秋永優子助教授は、それぞれ次のように定義している。
〈食育〉=子どもの栄養改善と、食を通じた心の健全育成
〈食教育〉=日常の食生活についての実際的なあり方を主体とした、食に関する教育
〈食農教育〉=食料を生産する農業の役割や重要性を、理解・体験することに主眼を置きながら、食生活との関連を図った教育
中村先生は多くの講演の依頼などから感じたこととして、「学校の教師の立場からはその差はあまりない」が、「行政の啓発事業・プログラムという視点では、文科省や厚労省の『食育』と『食教育』、農水省の『食農教育』という違いが見える」と指摘している。