自分達が育てて収穫したもち米で餅をつき、収穫祭の計画も自分達で立てて、関係者を招待し自然の恵みに感謝した。長野県上田市立東塩田小学校は昨年一年間、5年生が、地元のJAによる協力のもと米作り。体験ばかりでなく、総合的な学習の時間につなげて実り多い学習の機会とした。
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東塩田小学校の地域は農村地帯で、農業を営む家庭の児童も多い。学校が休みの日には農作業の手伝いをする子ども達も少なくないと言うが、機械化された現代の農業では、泥に直接触れることはあまりない。
同校は毎年、社会科「米についての学習」に関連して5年生が、地元のJA信州うえだに米作り体験の指導・協力を依頼。同年は5年1組担任の城本真琴先生が担当。6月9日の田植えからスタートした。
学校から徒歩5分ほどにある水田を借用。「オーナーさん」と呼ぶ地主の農家からしろかきを見せてもらい、田植えのやり方をJA青壮年部員等が中心になって指導。分からないことを質問してから、子ども達は裸足になって田んぼに入った。
普段の生活ではまずありえない、素肌で感じる田んぼの感触。それだけで子ども達は歓声をあげた。
手作業で、苗と苗の間隔を均等に曲がらぬように植えるのは、大人でも難しい作業。それでも子ども達は少しずつコツをつかんで、時間とともに軽快なテンポで植えられるようになった子も見られたという。
この日植えたのは「もちひかり」。800平方メートル余りの水田は、70人の子ども達の手で午前中いっぱいかかって植え付けられた。
自身が青壮年部員で保護者であるという父親は「この子ども達が大人になる頃でも、この活動はきっと続けている」と語った。「お米について子ども達に知ってもらいたいと、農家の方の思いは真剣です」と城本先生も感謝する。
■さあ、もちつきだ
でも臼が足りない
手作業での田植えから稲刈り、ハーベスタを使った脱穀まで、米作りの一部始終を体験した子ども達から、「ぜひ収穫祭をやろう」との声があがった。この盛り上がりを受け、当初は社会科の一環としての「農業体験」という位置付けだったものを、総合的学習の時間も使って収穫祭の準備に向かった。準備から当日のイベント内容まで、すべて子ども達が計画・相談して取り組んだ。
肥料代などを差し引いて、子ども達が手にしたもち米は1俵。これで約1000個のもちをつき、お世話になった人々を招待して振舞おうと計画。もちつきはどのようにして、何が必要かをインターネットで調べるうちに、子ども達だけでは手に負えないこと、臼や杵が学校の備品だけではとても間に合わないことなどが分かってきた。
そこで子ども達が考えたのが、地域の家庭にお願いして、臼や杵を借りること、もちつき当日の手助けをしてくれる大人を探すことだった。手紙の文面も自分達で考え、手分けして地域に配布。本番には14人の大人が協力を買って出てくれたそうだ。
【2004年5月15日号】