香川県綾南町立滝宮小学校(末澤敬子校長)の「子どもたちがつくる弁当の日」。その実践は「地域に根ざした食育コンクール2003」(提唱/農林水産省)で最優秀賞を受賞した。提案者である竹下和男前校長(平成15年度から同県国分寺町立国分寺中学校長)に取り組みや成果を聞いた。
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■体験から食への関心育てる
竹下校長 「はじめに4月のPTA総会で提案しました。実施は5、6年生、第1回は10月、基礎的な技能・知識は1学期をかけて家庭科の授業で行う、食材購入から調理、盛り付けまで子どもが自分で作る、くれぐれも親は手伝わないように。これが『弁当の日』の基本です」
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この取組みは突然のようにはじまった。それが今年度で4年目を迎える。竹下校長が「弁当の日」を思いついたのは、平成13年2月、学校給食の理事会で学校給食が抱えている課題が「食」の根幹にかかわると実感したからだった。
例えば食品衛生の観点から土に近い食材であればあるほど下処理に時間を取られ、現行の調理員数では冷凍食品に頼らざるを得ない。これは給食費を安価に保つための手段のひとつ。また、給食費の抑制は農薬が問題になった中国産をはじめ、低コストの輸入野菜にも及ぶ。
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竹下校長 「確かに輸入野菜は安い。けれども安全面が心配。その問題を解決するひとつの手段が『地産地消』です。多少見た目は悪い野菜でも生産者と消費者のお互いの顔が見える関係になっていれば安全は保証され、安心感から信頼関係が築けます。地産地消は流通基盤を『経済性』でなく『倫理性』に置くための現実的な方策ですね。そのかわり、安い値段では生産者の生計は立ちません。農薬も使わないほど収穫量は減ります」◇
では、どのような方法があるのだろうか。
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竹下校長 「学校の栄養士さんや調理員さんはその少ない人数の中で少しでも『旬の食材』を提供できるよう努力しています。けれど、限界はあります。その改善策として給食費を一食当たり20円値上げで調理員一人増員する、それによって『手作り』をより給食に出せます。地産地消も同じです。20円か40円の値上げで『食の安全』『こだわり』『地域活性化』を得る。そんな議論をしてもいい時代ではないでしょうか」
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では、「弁当の日」に地産地消はどう活かされるのだろう。
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竹下校長 「『弁当の日』にそれぞれテーマを設けます。わかりやすいのは『地元の野菜を使ってつくろう』をテーマにすると、子ども達は自分で食材の買い出しもするわけですから、地場産業の学習にもなりますし、価格や季節の野菜も勉強になります」
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「弁当の日」は「給食感謝日」でもあるという。また、実施する学校のアイデア次第で、いくらでも応用がきく。
「お米の特性を生かしたお弁当を作ろう」をテーマにして、お米の学習と料理の実習を結びつけるなどのアプローチも考えられる。「弁当の日」っておもしろい…それは子ども達共通の笑顔だ。
〈参考資料/弁当の日がやってきた 自然食通信社刊〉
【2004年4月10日号】