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学校給食は食育の教材【第6回】中学校での取り組み(1)

生徒の「自主性」と「創造性」を重んじた活動を

 

学校給食
十五夜などには月見汁、
きな粉目玉で季節感を

小学校との違いはあるものの、中学校でも伝えたい食育の内容は不変のものです。生徒へのアプローチ法は「自主性」と「創造性」を重んじる対応が効果的で、豊かな発想と深い洞察力を発揮した活動が展開できると言います。筆者自身中学校勤務の経験がないので、公開授業の参観と栄養教諭・学校栄養職員OB・現役の方への取材を通じて3回シリーズ(次回は1月1日号)で紹介します。


小学校との違い
食育
食育
各班が工夫を凝らしたメニューを考案。「明日から理想的な朝食を自分達でも考えながら食べてほしい」と願う

(1)小学校は年齢差が大きく児童の理解度が一定ではありませんが、中学校は年齢差があまり見られず生徒の理解度も高いと聞きます。そのため授業も組み立てやすく、短時間で指導者の意図やねらいへ到達しやすい傾向にあります。

(2)進路指導や生活指導に重点が置かれ、食育の推進には管理職をはじめ教員の意識を変える必要があります。しかし、理解が得られれば学校全体で生徒指導に向かう体制が整っているので、取り組みやすく成果も出やすいというメリットがあります。

(3)専科制のため、食育の授業等を組み込む時間が取りにくい反面、栄養士の専門性を認める土壌があり、食育を任される傾向にあります。

(4)小学校に比べ給食時間が短いため(小:40〜50分、中:25〜35分)、給食時間を活用した食育はゆとりがなく、短期決戦型となります。しかし、この取り組みを継続し積み重ねることで、成果は大いに期待できます。

地域の栄養士が複数で授業

このような中、各校で工夫を凝らした食育授業が行われています。江戸川区のある地区の栄養士の皆さんは、「生活リズム向上公開講座」を活用した食育を実施しています。江戸川区の小中学校は年に1度この講座開催が義務付けられており、体育・保健・食育の授業公開と、講座主旨に合わせたテーマの講演会や懇談会を開催します。

S中学校では講座に合わせて、1年生で「朝ごはんを食べよう」の授業が開催され、5学級で地区内の栄養士2名と担任による授業が各学級で行われました。授業は「導入」でDVD教材(朝食の有無による、感知テストの誤答率や体温の様子/大学生対象実験)を見せ、「展開」では朝食の必要性と望ましい食事内容について実態と共に説明した後、各班で朝食献立とテーマを考え発表するというものでした。

一人職だからこその広がり

生徒は積極的に授業に取り組み、各班のテーマも楽しくユニークなものが発表されました。授業後には参観した保護者を交え、生活実態調査結果について栄養士から説明した後、懇談会が持たれたそうです。

地区の栄養士が集まり授業研究をして、協力しながら実施していくことは、一人職種の栄養士にとって大きな力となっていくことと思いますし、活動の広がりを感じました。

大留光子=昭和53年より荒川区他3区を経て、平成21年度に栄養教諭として江戸川区に勤務。平成25年3月退職。現在は、学校給食研究改善協会調理講師のほか、学校給食ウェブサイト「おkayu(http://www.okayu.biz/)」のディレクターを務める。

【2014年10月20日号】

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