第45回
野菜好きの子育てる 生活科でのT・Tを中心に
10月30日に新潟県民開館会館で行われた、第45回全国学校給食研究協議大会全体会の午後の部は、学校給食で現在最も注目されている、学校給食を中心とした『食に関する指導』の実践の発表があった。健康教育は日常の生活のすべてが関わる課題だが、正しい食習慣の形成はその基本となる部分。学校給食はそのための「生きた教材」として位置づけられる。さらに31日に行われた7つの分科会の中から、第4分科会「中学校における食に関する指導」で、提案された3つの実践発表を紹介する。
■新潟県東本町小学校(全体会)
全体会午後の部「食に関する指導の提案」は、上越市立東本町小学校の堀川智子教諭、山本雅代栄養主査によって、「給食の献立を生きた教材として活用する〜生活科での食に関する授業を通して」をテーマに、豊富な映像による紹介を中心に行われた。
また同実践に協力してきた新潟大学教育人間科学部助教授の笠井直美さんが、コーディネーターとなり、発表の内容を深めた。
東本町小学校の教育目標は、「豊かなちえとやさしさをもち、たくましく生きる子ども」。その実現のために、「健康・安全で活力ある生活を営むために必要な資質や習慣を育て、心身の調和的な発達を図る」という体育・健康に関する指導の重点を設置。給食、体育、保健・安全教育を柱に、生活科や総合的学習、特活などとの連携を図っている。
また1正しい食事のあり方や望ましい食生活を身に付ける、2楽しい食事や給食活動を通じて豊かな心を育む、などの「食に関する指導の目標」を掲げ、全教科、活動はもちろん、家庭や地域との連携も関連させた指導計画を立てた。そこで育む具体的な子どもの資質・能力は、次の通り。
低学年=好き嫌いせずに食べる/よい姿勢で楽しく食べる
中学年=食べ物の働きを知り、残さず食べる/食事のマナーを知り、楽しく会食する
高学年=栄養のバランスを考えて食べる/会食や給食活動を通じて、望ましい人間関係を育む
■育てた野菜で パーティーを
発表は、2年生生活科が行った学校農園で自分たちの野菜を育て収穫し、野菜パーティーを開き、夏休みに野菜料理のレシピを作った一連の、「夏野菜にチャレンジ」を中心に進められた。
学校の「ひかり農園」で子ども達は自分が選んだ夏野菜を、地域ボランティアの・畑の先生・から指導を受けながら栽培した。とれた野菜をどうするかを相談する中から起こった子ども達の「夏野菜パーティーをしよう」という声を発展させて実践に。パーティーの招待状作り・準備やメニューなども子ども達が話し合いながら進めた。
この単元でねらったのは、1自分たちで育てた野菜を調理して「夏野菜パーティー」を開き、収穫の喜びを味わう、2大切に育てた夏野菜の栄養を知り、調理して味わう活動を通して、「食」への関心を高める、3収穫の喜びを絵や文で表現する、など。
夏野菜の栄養や調理、野菜を取り入れた栄養バランスの指導などは、学校栄養士と担任とのT・Tで進行。コンピュータ教室で同校のオリジナル・ソフト「パクパクロボット君」を活用し、野菜のパワーを理解して野菜料理のレシピ作りを効率的に行った。
同単元では「野菜パーティーの計画を話し合う場を十分に設定する。この活動を通じて、子ども達の『収穫した野菜をみんなで大切に食べたいな』という思いを膨らませる」、「『大切に食べたい』という子ども達の思いが高まった段階で、自分たちの野菜の新鮮さや野菜のパワー(栄養)に目を向ける活動を設定する。その際、子ども達が野菜の栄養を理解しやすいように、学校栄養士とのT・Tを行う」、「料理や調理のイメージを豊かに膨らませられるよう、料理の絵を描いたり、コンピュータによる簡単なレシピ作りの活動を設定する」、「野菜に対する関心を高め、協力して調理することが出来るよう、ともだちが作った野菜を一緒にして調理する活動を設定する」、などの視点を意識した。
■自作ソフトで レシピ作りを
野菜料理レシピの制作にあたって、事前に子ども達は自分の畑で作った野菜をじっくり観察、野菜のパワーを考えた。続いて学校給食や家庭で出た野菜料理を思い浮かべながら、自分が作りたい料理をイメージしてパーティーへの期待を膨らませた。
コンピュータ教室では野菜に関連したクイズを行い、学校栄養士の指導により「パクパクロボット君」が登場。野菜の栄養を分かりやすく説明して、健康と野菜の働きや大切さに子どもが気づき、レシピ作りや調理への関心と作った料理を最後までしっかり食べようとする意欲の高まりをねらった。
レシピ作りは2人に1台のコンピュータ。使う野菜は基本的に自分たちの畑でとれたもの、足りない場合は1・2種類の範囲で加えた。給食のメニューも参考にできるよう、デジカメで料理を撮影した写真が閲覧でき、参考にした。またソフトには事前に肉、卵などの素材を冷蔵庫のホルダーに登録することで、必要に応じて自由に取り出せるようにした。
子ども達が決めた夏野菜パーティーの献立は、盛りだくさん。「野菜いっぱいカレー」、「夏野菜サラダ」、「野菜いっぱいスープ」など。事前調査では41%が、「野菜はきらい」、「体に必要だから我慢して食べる」という子どもの実態だった。その子達がパーティーの感想には「自分で作ったからすごくおいしくて、3回もお代わりした」と書いた。また夏休みに家庭でも作って家族に食べてもらった、親子で野菜料理をしたなど、自発的な行動に変容した様子が伝わった。
■「畑の先生」は 地域の大人達
コーディネータの笠井助教授から、T・Tによる授業を通しての課題、レシピ作りでの指導に付いて質問された山本先生は、担任との十分な事前準備・打ち合わせの時間の確保が難しかったと振り返った。またレシピ作りでは、食材の組み合わせに関して特に指導しなかったが、子ども達がイメージしやすいように準備した給食の献立写真を見て思い出しながら、子ども達は「トマトが入いっているよ」、「これとこれは煮るんだよね」と確認していたという。
野菜嫌いの調査について堀川先生は、嫌いな野菜の上位は、玉ねぎ、なす、ピーマン、トマト、セロリ、グリーンピースなどで全国的な傾向とほぼ同様であると言う。
また畑の先生とは、同校のサポート委員に登録されている地域の人々で、土作りから指導してもらっている。これを核に子ども達の祖父母、保護者からの協力も得やすく、「明日は活動があります」と一声かけると10数人がすぐ集まる。時々野菜の様子を見に寄っていく地域の大人もあり、地域ぐるみで見守ってもらったと語った。
【2003年11月15日号】