教育家庭新聞・健康号
TOP健康号子どもの心とからだの健康  バックナンバー
子どもの心とからだの健康
親が子どもたちのために活動することは当然

 文科省では、平成18年より「子どもの生活リズム向上のための調査研究」を全国の指定地域に委託している。委託団体は、地域によってNPO法人であったり、青少年委員会であったりさまざまだ。東京都新宿区では、小学校PTA連合会による「新宿区子どもの生活向上プロジェクト実行委員会」がプログラムを進め、子どもたちの健康的な生活の支えとして効果を上げている。同プロジェクトをはじめ、さまざまな活動を他団体との連携のもとに精力的に行っている優良事例として、新宿区立小学校PTA連合会会長・亀井氏に話を伺った。 (レポート/中 由里)

起床・朝食・夕食 アンケートを実施

―この調査を小学校PTA連合会(以下小P連)が受諾したのはなぜですか。

  小P連では「防犯、夢事業、親力向上」という3つの目標を掲げて活動を行ってきました。これらの活動で区長や教育委員会との関係も良好だったためにいただいた話ではないかと思います。

―調査結果とプロジェクト内容を教えてください。

  調査は、平日の子どもたちの生活について新宿区立小学校30の児童8124人の保護者にアンケートを実施し、5002人から回答を得ました(回答率62%)。
  朝7時に79%の子どもが起床し、82%が夜9時から10時の間に就寝しています。高学年になるにつれて就寝時間は遅くなる傾向があります。朝食については、92%の子どもが「ほぼ毎日食べている」ですが、「保護者と一緒に食べている」のは36%、「保護者と一緒に食べることがほとんどない」のが24%と二極化が見られました。「夕食を子どもが一人で食べることはほとんどない」と答えたのは84%、保護者の66%が「なるべく栄養や素材に配慮している」と答えています。
  あとは、学校によって「30人31脚」や「早朝校庭開放」、「親子料理教室」など、生活リズムや食への関心を高める活動を実践しています。戸山小学校では、ラジオ体操とお手伝いを組み合わせて実施しました。

防犯・夢・親力 3つの目標の定着

―小P連の3つの目標についてお聞かせください。

  1つは地域のために「一斉パトロール」で防犯を徹底することです。9月の防災の日に各校で児童引取訓練が行われるので、保護者の多くが参加できると考え、その日に保護者による一斉パトロールを行っています。区役所前でスタートセレモニーを行って参加者の意識を高揚し、テーマカラーのオレンジの腕章をつけて各校地域をパトロールします。
  2つ目は、子どもたちの夢を広げる「ゆめじぎょう」と称して、現在は主にスポーツ振興活動を行っています。プロのサッカー、野球、バスケットチーム、ショーコスギ塾の協力を得て、子どもたちにスポーツを通して夢をひろげるというものです。
  3つ目は保護者のために行う「親力向上」活動です。生活向上プロジェクトもその一部とも考えられます。今後は親力セルフチェックシートの配布などを予定しています。
  これらは継続していくことが一番肝心ですから、例えば夢事業に協力してくれるプロスポーツ選手に一斉パトロールに参加してもらうなど、3つの活動が互いに関わりあって地域の活動として定着するようにしていきたいと思います。

実績を積み企画の継続を実現

―やはり継続しにくいことが一番の問題ですか。

  PTAは子どもが卒業したら親も活動を終えるという原則がありますから、どんどん人が変わっていくのが宿命です。でも役員が変わるたびによい活動が失われたり、成長していたプロジェクトを一からやり直したりしていたのでは組織として無駄も多く、発展もありません。この会長が始めたことはその人が辞めたらおしまい、ということではなくて、企画を一人歩きさせていくのが私の仕事だと思っています。
  小P連は区立小学校全体をつなげるものですから、常に区でまとまっていくという意識がないといけないと思います。夢事業にしても防犯活動にしても、単P(一つの学校のPTA)活動なら簡単なのですが、区の中の全ての子どもたちに機会が均等に与えられるべきだと思うんです。
  我々は団体としては学校とも警察とも立場や性格が違いますから、例えば防犯上、警察の管轄の隙間を埋められることもあると思います。学校と学校の架け橋にもなれると思います。逆に我々ではできないことを学校に協力してもらえれば、活動はもっと定着すると思います。例えば、どの活動も自由参加なので、参加者がいつも決まってしまうという弱点があるのですが、インフォメーションを徹底したり、できれば学校の授業に組み込んでくれれば、児童の受け止め方が違ってくると思います。

―PTA自体が自立的な団体だから会員一人ひとりの意識向上も大切ですね。

  よくPTA活動を「ボランティア」と称して、まるで奉仕活動のように考えている人がいますが、自分の子どもにかかわることは親としてするのが当たり前であって、それをボランティアというのはおかしいと思います。
  一人ひとりの意識向上を我々が担うのはむずかしいことですが、実際に活動している人たちが魅力的に見えなければ何をやっても説得力はないと思います。この活動が必要であり、効果もあるんだということを、実績を積むことで示していければと思います。



【2007年8月18日号】

新聞購読のご案内