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子どもの心とからだの健康
ビオトープを通じて大人も子供も共に学ぶ

蓮根第二小学校ビオトープ

前月号で学校ビオトープの現在と今後の課題をお伝えしたが、今回は、その優良事例をお伝えする。東京都板橋区立蓮根第二小学校は、2000年より学校ビオトープ整備に着手、全校児童の発想と作業、保護者の会、地域、行政の助けを経て完成、2002年の全国学校ビオトープ・コンクールで「日本生態系協会 会長賞」を受賞した。同校では独自の工夫でこの活動、活用を継続、豊かな環境は卒業生から在校生、新入生へと受け継がれている。
(レポート/中 由里)

▼関連授業にカリキュラム化

―蓮根第二小学校のビオトープの特徴は何ですか。
私たちのビオトープは、もともと砂場だったところに土を盛って池を掘り、この池を中心に植物を入れて作りました。ビオトープの位置を高くすることによって、できるだけ土を掘らずにすむようにしたのですが、一段高くしたことによって、校庭との境がはっきりしました。池からは側溝を掘り、あふれた水は排水口へ流れ込むようになっています。土を盛り、踏み固め、池底にゴムシートを張って整備し、土嚢で固め、周りに木を植えました。設計も含め、作業は子どもたちを中心に、教職員、保護者、土木のプロの方の助力を仰ぎました。

コンクールの評価観点は6つありました。1、地域の自然を基本とし、地域の野性動物が暮らしやすい工夫をしているか、2、計画から整備の段階で子どもたちが主体的に取り組んでいるか、3、学校が地域住民、行政、環境NGOなどと積極的に連携を取っているか、4、学校ビオトープを教材として積極的に活用しているか、5、維持管理、活用のための体制が整っているか、6、校内の取り組みから発展させ、地域に向けて自然と人のつながりを広げていく視点を持っているか、です。

  これらの評価観点で高く評価されたのも嬉しいことですが、実はあとで審査員の先生方に、「保護者のつくろう会の存在がすばらしい」、「ビオトープに関連した授業をカリキュラム化したことがすばらしい」とのご感想をいただきました。これは本校独自の特徴だと思います。

▼つくろう会の大きな存在

―学校ビオトープは整備もさることながら継続が難しいと聞きましたが、何か工夫をしているのですか。
児童の「ビオトープ委員会」がきちんと受け継がれていることはもちろんですが、やはり保護者・地域の方の「ビオトープをつくろう会」の存在が大きいと思います。これは、もともとあった「保護者と教職員の会」を中心に保護者の方々に呼びかけられ、平成12年に正式に発足しました。主体はあくまで児童ですが、池底掘りや側溝の粘土張り、大木の設置など、大人の手を必要とする作業を行ってきました。現在は月2回の会を基本に、取り組み方を模索しながら存続しています。OBも多く、活動は盛んです。

―現在の様子はいかがですか。
  池の周りには荒川で採取してきた種や草を撒いたり植えたりしましたが、かなりうっそうとなりましたね。もともとあった大きな木は2本だけでしたが、柳などがどんどん大きくなりました。引き続き観察は続けていますが、生き物もぐんと増えています。ただ、そろそろ改修しなければならない部分も増えてきています。とくに池底に敷いたゴムシートが劣化してきています。

▼目に見えない6年間の育ち

―学校ビオトープが教育の場にできたことで、何が大きく変わりましたか。
  ビオトープの整備と存続を授業に取り入れたことが児童たちの学びになり、国語の俳句作り、社会・理科の自然観察や田んぼ作りなど、実際に各教科の教材として活用することで、生きた授業ができるようになりました。 
 
とくに児童同士、周囲の大人たちとの共同作業による学びは大きかったと思います。児童のみならず、教職員、保護者の方々の環境意識も高くなったようですし、地域や行政機関から資材などさまざまな支援を受けたことによって、地域の真心がこもったビオトープになったと思います。
しかし、何より、子どもたちがごく自然に土や生き物に触れ、地域の自然環境に眼を向けるようになったことが大きいのではないでしょうか。現代の教育は即効性が求められることが多いと思うのですが、自然との付き合いは、長期的に構えなければできません。この学校にいる6年間の間に、目に見えないものが育っていくと思います。

  また、ビオトープをめぐる日々の作業、課題解決のためには、大人の指導性が強く求められるということは新たな発見でした。児童主体の取り組みとはいえ、大人がうまく関わっていかなければ、発展できないからです。ですから大人にとっても大きな学びになったと思います。さらに、自然が相手なので思いがけないことが起こることも多く、大人が児童から教えられることもあります。相互関係が非常に大切になるのです。今後に向けて、教職員もさらに育っていかなければいけないと思っています。

 


【2007年7月14日号】

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