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子どもの心と体の健康
日常生活で養う社会への参加する力
青少年自立援助センター
 不登校やひきこもりを経験した人たちが、寝食を共にしながら学習や労働をし、社会的自立をめざす。それが東京都福生市の特定非営利活動法人「青少年自立援助センター」(NPOユース サポートセンター 略称YSC)で、現在は通塾生も合わせ、75名程が参加しています。今回は同センターの創設者で理事長の工藤定次さんに、その目指すものなどを伺いました。尚、工藤さんはこの10月1日、東京都より「教育功労賞」を受賞しました。



 生活リズムとコミニケーション力を基礎に


■「タメ塾」から
  YSCへ


YSCのそもそもの始まりは?
 30年程前、知人の病気で、学習塾を手伝っていました。彼が亡くなり、塾を閉めるつもりでしたが、塾生の中にサリドマイドの女子がおり、「この子がなんとかなるまでは」という思いで、続けることにしました。1976年に学習塾を止め、フリースペース「タメ塾」を作りました。
「タメ塾」になってからは?
 来る者は拒まずでやっていましたので、障害者、不登校、ひきこもりと、いろんな子がきて、私は自分自身が遊びながら、やりたいことをやっていこうと思いました。子どもは来なくなるでもいいし、来るでもいいと。79年に共同生活寮「遊游館」を開設し、82年、福生市の資源回収登録団体となり、資源ゴミやリサイクル家電商品保管用の「第一工場」、また、ハウスクリーニングチームや、漬け物野菜加工用の「第二工場」を開設、運営してきました。99年には、タメ塾関係者と、活動に賛同する教育関係者、大学教授、精神科医など専門家を交え、YSCは特定非営利活動法人(NPO)となりました。



■YSCに
  参加するには
青少年がYSCに参加するには?
 案内書や報道されたものを読んで、自分から入りたいと1人でくる若者もいますし、親御さんが相談にきて、本人は拒否している場合もあります。後者のときは、こちらのスタッフが1ケ月に1回くらい家庭訪問をし、本人と話しながら、本人が利用しようとなるまで通います。

どのくらいで本人は承諾しますか?
 本人が来るまで1〜2年でしょうか。説得が短いのは、若い人です。年齢の高い人は、こもっているうちに思考が頑なになったり、第3者の言葉に素直に耳を傾けないことがあります。
自分で来る人はすぐに決まるのですか?
 1週間の体験入寮をしてスタッフと話し、長期的に利用するかどうかをお互いに考えます。
YSCを希望するのは、どのような人ですか?
 不登校やひきこもりで八方手をつくしたけれども、保健所や病院は本人が来ないと診てくれないですし、親子で行き詰まってしまい、第3者の力を借りたいという人たちが多いです。



■YSC独自の
  プログラム
寮生活はどのようなしくみですか?
 ひきこもりや不登校の若者は、最初に共同生活寮に入り、そこで初期的訓練をします(第1ステップ)。第2ステップでは中間的な施設に行き、少し専門性のある訓練プログラムをします。第3ステップはワンルームマンションの寮で、アルバイトや仕事ができる人間が、自分で生活を組み立て、初めてガス代、電気代などを払って、1人暮らしをします。

各ステップの訓練の内容は?
 第1ステップは、「生活のリズム作り」と、「人とどうつきあうか」です。外に出て元気がない、友だちが少なくて遊べないなどの子には、ボールを打つ、投げるなどして、体力作りをします。それには相手が必要ですが、コミュニケーションは、話すだけではなく、「同じ快感を味わうこと」でもあるからです。皆と遊べるようになれば、その時間に起きて、行けるようになります。この間は約半年です。第2ステップは、「生きるためにどうする?」という課題を1人1人が考え、それに沿って、メニューの中から自分でプログラムを選びます。進学をめざす人は、通信制高校のサポートをする学習クラスと、カルチャー教室。就業をめざす人は、その基礎訓練と技術修得を中心に、夜間の就業生対象学習クラス他をとります。第3ステップは、第2ステップでの研修先の業者の家に雇ってもらったり、自分でアルバイトの仕事先をみつける期間をいいます。ステップ2と3で半年から1年。ですから、最初から約2年くらいで出ていくことになります。

各ステップでの若者への働きかけは?
 第1ステップの子には指示型ではなく、「何々したいかい?」と聞きます。第2ステップでは、「〜したい」よりは、「〜していかなければ」を。第3ステップでは、「したいのを我慢」して、「しなければいけない」ことをさせます。たとえば「明日仕事があれば、前の日には早く寝なければならない」というようなことです。


■心の回復
  だけでなく
YSCで、めざしていることは?
 基本的に、「メシを食っていくのにどうするか」です。心の回復をはかるフリースクールは多いですが、それだけでは自立できませんから。不登校になった人間が幸福に生きるには?と考えた場合、自立してメシを食えること、干渉されずに自分の人生を歩めることでしょう。それは家庭教育も同じですし、障害者だろうと、非行少年だろうと、精神障害者だろうと、同じです。

不登校やひきこもりの子を家で見守るのは、大変なことですね。
 子にとっては、親の影響力より外の影響力、つまり感動を受けるものの方が大事でしょう。自分を発見しようとする時ですから。実は、この「自分とは何か」を発見するという課題が、青少年にとって一番大事なのです。学校社会や家庭のさまざまな圧力によって、「自分はどうする?」と問い返すとき、若者は成長します。ところが、不登校状態はそうした圧力が弱まるので、それを続けたらどういうことになるか?ということです。同じ仲間の中で疲れた心と体を休めるのはいいが、それを過ぎたら、体を動かそうとしなければ。一般に、同質のものが集まったら、お互い理解しあえて当たり前。そうではなく、異質の理解できない人が集まって、理解しようとするところに高め合いがあります。一般社会はさまざまな人の集まりなのだから、生きてゆくには、「一般」のところから始めねばならないでしょう。

■不登校生は
  学校が嫌いか
不登校生が一般的な経験をするには?
 不登校やひきこもりの若者は、社会参加したいのに、働きたいのに、そうしていない自分は後ろめたくて、肯定できない。その状態から逃れたい。だから、一概に「不登校の子は学校が嫌いだ」とはいえません。自分が行っていたその学校、その集団がいやなだけで、別の学校、集団ならいいという子がたくさんいます。大勢で遊ぶのは楽しいからです。ですから、「学校には行かなくてもいい」と学校を否定するのも、「行かなければいけない」と強制するのも、おかしいと思います。むしろ不登校生に一般的な経験をさせるには、育ち、考え方、生活レベルがさまざまな人が集まっている「学校」は外せません。ただ、本人達の進路は、勉強したければ「学校」、そうでなければ「就労」でしょう。その2つが、子どもたちが選ぶべきものです。ですから、どちらでも選べる、また変更できるような力をつけることが大切でしょう。

本日はどうもありがとうございました。

 (連絡先)042−553−2575
 http://home.interlink.or.jp/~ysc/
 ysc@interlink.or.jp


【2004年11月13日号】