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INTERVIEW
香港から来日して35年
歌手・教育学博士・エッセイスト
アグネス・チャン さん

人生の出会いを語り・平和を歌い 
          
共に一番好きな自分の姿に戻ろう
アグネス・チャンさん
 「香港からきた妖精」が来日して35年。それを記念して「日本デビュー35周年記念トーク&ライブ アグネス・チャン〜世界へとどけ平和への歌声!」(12月1日/東京・中野サンプラザ、4月25日/京都・京都会館)がまもなく開催される。

 ボランティア活動として学校で歌い始めた中学生の時スカウトされ、香港でデビュー。その後、17歳で単身来日。不安よりも期待が大きく、来日を深刻に考えてはいなかったが、「香港はバイリンガルの人が多かったので、日本の若者が英語を話せないことがショックで、どうやって友達をつくろうかと思いました」と必死で日本語を覚え、学業と芸能活動を両立した。

 そして1985年、大きな転機を迎える。24時間テレビの総合司会としてエチオピアを訪れ「飢餓・干ばつ・内戦に苦しみ目の前で亡くなる子どもたちを見ていられないと思いました。20カ国以上を訪れていますが、日本ユニセフ協会大使になってからは、かわいそうだからではなく、子どもの人権が守られていないから助けたいと考えが変わりました」と、子どもたちの持つ生きる権利を、大人たちに理解してもらうための活動を続けている。

 3人の子どもたちの母でもあるアグネスさん。「子どもがいかに周囲に幸せをくれるかがわかりました」と、出産を機に母親の気持ちをより理解できるようになった。子どもたちとは、何時間でも話し合い、時には「1日ママとの旅」と出かけることも。朝は弁当を作り、仕事が終わるとすぐに帰宅して夕食を作り、最大限子どもとの時間を優先するのが信条。「私は友だちがいないほど、子どもとの時間を徹底してつくっていますよ」と微笑む。

 子どもが大好きで、スタンフォード大学で教育学も学んだ。「目からうろこが落ちました」と、その経験は現在のすべての活動に通ずるものがある。「学校は知能を高め、社会で自信を持てる人間に育ててくれる場所だと思いますが、自分を本当に価値のある人間だと実感したり、愛されている実感を抱けるのは家庭ですよね。親に対してもう少し窓口を広げて、お互いにヒントを与え合うのが大切です」と現代人の家族関係を懸念する。

 35年日本で活躍し、今ではデビュー当時子どもだった人が親となり、夫や子どもとコンサートを訪れることもある。「歌は最高のコミュニケーション道具」と考え、今後開催されるデビュー記念コンサートでは「人生での大切な出会いを語りながら思い出の曲、平和の曲を歌います」とボランティア活動も垣間見ることができる構成を考えている。「私たちは世の中に一番多い世代。この世代の人たちの考え方を大事だなって思ってもらえるように、一緒に自分が一番好きな自分に戻りましょう」。

【プロフィール】
 アグネス・チャン=1955年香港出身。72年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経てトロント大学で社会児童心理学を学ぶ。ボランティア・文化活動にも積極的に参加し、日本ユニセフ協会大使として飢餓に苦しむ国々などを訪問。94年には米国スタンフォード大学教育学部で教育学博士号を取得。00年には歌手活動を本格的に再開し、今年春には全米でもデビューした。


【2006年11月11日号】