■講演、著書を通じて高校生や大人達に
「夢をもち全力投球を」と語り続ける
留学希望者の英語力を評価するTOEFL理事会の日本人初の理事(05年まで)という肩書きから、近寄り難いイメージを持ってしまうが、会えば飾らない人柄で、それだけに本物の存在感≠思わせる。
高校や中学・大学に招かれて生徒を前に講演する機会が増えた。主催はPTA・学校など様々で、聴講席に下りて生徒たちと会話しながら進める一方的ではない講演が好評。多くは国際教育や英語学習がテーマだが、将来の夢や目標を持つこと、何でも良いから自分のやりたいことを見つけ全力投球しなさいというメッセージは共通する。
海外大学進学の準備教育機関であるネバダ・カリフォルニア大学国際教育機構JAPAN(NIC)代表として19年間、世界の大学に正規留学する学生を輩出。その数は6500人近くに上るが、学習・生活環境、性格面などで困難な壁に直面しながら、克服し夢をかなえた学生も少なくない。
「正規留学生というと何か特別で、高校時代から英語力抜群だったのだろうと思われがち。NICに入学する学生はそのような人ばかりではなく、むしろ高校まで英語は苦手だったという人が、1年間で必要な英語力を身につけて留学しています。それには『死ぬほど勉強』しなくてはならないのですが、目標があるからがんばれるのです」
出会った若者たちのありのままを、これから続く若者たち、教師や保護者に知ってほしいという思いからこのほど著書『海外留学ハードbut楽しい〜本気の学びは、人生を変える!』を教育家庭新聞社から出版した。第一章はNICに入学し留学した学生たちの様々な背景やエピソードと日本と海外の教育の違い。全く違う海外の大学への正規留学に必要なクリティカル・シンキング(分析的思考)、アカデミック・スキルなどを説明する第二章、そして留学したことで鍛えられた「人間力」を紹介する第三章などの内容。
「留学が全ての目的ではなく、夢をつかむ一つの手段。将来やりたいことが分からないという人にこそ読んでほしいですね」。講演と同様に、留学を一つの題材にした「生き方、進路指導」の指標でもある。
講演中に会話する高校生たちの多くが、簡単な質問にさえ応えることを躊躇する。これは国際社会の中では不利なだけ。でも講演の後で寄せられる生徒からの感想を読むと、そこに本音が見えると言う。
「今の高校生の気質は、努力することや将来を真面目に考えることを人に知られるのが恥ずかしい。また夢を語る前に『どうせ…』とあきらめが先立ってしまう。一方で誰かに聞いてほしいという思いもある。学校や家庭で大人は、自分の価値観を押し付けるより、子どもの思いにまず耳を傾けてください」とさりげなくつけ加えた。
<プロフィール>
廣田和子(ひろた・かずこ)
千葉県出身、教育学博士。
NIC代表、米TOEFL理事会理事(01〜05年)、レイクランド大学ジャパン理事、(財)国際教育協会常務理事。
20年近い国際教育の実績を生かし、講演や執筆に幅広く活躍中。主な著書に『海外留学ハードbut楽しい』(教育家庭新聞)、『きみは変われる!夢をもって世界に羽ばたこう』(草思社)、『香里 18歳の天使』(同)、『若老女男大志抱ケ』(新晃社)など。
【2006年8月19日号】