■壁を乗り越えられる力量身につけて
学校が楽しいところであるために 就職活動でメーカーを受けるものの、立て続けに落ちた。「関西人の性。勉強できんかったら吉本行きや」と、吉本興業へ入社。「そこでどういきていくかが大事」と吉本で3年間、必死で働いた。大谷さんは「必死で働くことは悪いことじゃないですよ」と話す。
吉本時代、マネージャーを務めた横山やすしさんは、「つっぱって日本一で居続けた人」。しかし、横山さんは「自分と向き合って生きてきた人」でもある。その側にいたのは人生の財産だ。現在プロデューサーを務める志縁塾は、現役の大学生に社長業を任せている。自分は現場でやっていく人間、自らを「チアガール」と呼び、「毎日が楽しい」と満面の笑みを浮かべる。
幼い頃は、「こうあるべき論の塊」のような医者の父のもと厳しく育てられたが、父は教育にお金をケチることなく使い、患者には「分け隔てない先生。人の命にすごく真剣」と慕われ、そんな背中を見て育った。
子ども達の就職意識が問題視されるなか、これからの日本は高齢化も進み「日本人だけで日本人を支えていくことはできない」と考える。自身の娘さんには、「考える力」「問題解決能力」を養い、自分で壁を乗り越えられる「生きる力」をつけて欲しいと育てる。と言っても「家族も大事ですが、家族という単位にこだわりません」と子育てに構えた姿は見えない。
ある町で地域活性を行った時、集まったのは地元に残る元ヤンキー達。大谷さんは、彼らと本気で向き合った。その姿にほれこんだ彼らは、大谷さんの娘さんが反抗期の頃、いかに本気で大谷さんが生きているかを伝えた。「人類皆兄弟。回りまわってくるものですね」と出会いの大切さを感じている。そんな娘さんが学校のスピーチで、「うちの母親は天職をみつけてイキイキ働いている」と語った。「親が真剣に生きていたら子どもは気づくものですよ。親が人生を楽しむことはすごく大事」と大谷さんは言う。
「気づかせて学ぶ」それがコーチング。人生も会社も学校も、つまらないものにならないような努力が必要。「朝礼で倒れるのは、朝ごはんを抜いているからではなくて朝礼が面白くないから」、先生達に必要なのはプレゼンテーション能力。
自分もふくめたすべての人が「学校、会社が楽しいものである」ためには、自分自身でモチベーションをあげることが必要だ。毎日頑張ってはいない。「ドキドキする人」を作り、素直に人を「応援」し、「好き」という気持ちを大事にする。自分の応援をしてくれる人達が元気の源だから。
<プロフィール>
大谷由里子(おおたに・ゆりこ)=1963年奈良県生まれ。
・85年、吉本興業入社。
横山やすし、宮川大助・花子等のマネージャーを務める。
03年4月からフリープロデューサーとして、地域や企業の活性化を目的に、
講演やコーチング研修を年間200回行っている。
著書は「吉本興業女マネージャー奮戦記『そんなアホな!』」(朝日文庫刊)、「元気セラピー」(KKロングセラーズ刊)等
【2005年8月20日号】