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INTERVIEW 「人・仕事・人生」
身長・体重測定値の不規則な変動
悩みを持つ心、生活の変化も表す
国立保健医療科学院
 小林正子さん
国立保険医療科学院 小林正子さん
 小林先生は、長崎で専業主婦をしていた時期がある。高校の化学の教師として勤めていたとき夫の転勤で長崎へ。そこで今の研究につながる出来事に接した。長崎の小学校では当時、体重測定が毎月行われていた。だが、測定するだけで他に活かされている様子がない。なぜだろう。

 2年半後、教師に復帰。だが、同僚の大学院進学に感化されて研究心が再燃、子どもに関する研究をと、東京大学大学院へ進んだ。そこで発育に関する研究に携わった。

 自分の子どもを毎日朝晩継続測定する一方で、全国から身体計測値を集めて解析すると、次々に新しい発見があった。発育には規則的なリズム(波動)がある。身長や体重を測定、時系列解析すると、日内変動、週内変動、季節変動などの波動が現れる。身長における日内変動では、起床直後が最も高く、5〜6時間で一定の数値に落ち着く。収縮する量や変化率は睡眠時間や発育段階で異なるが、児童生徒の場合は登校後、1時間目と4時間目では1センチ近く差が生じ、身体測定の場合、こうした現象を考慮した上で計測する必要がある。また、週内変動では、身長、体重とも週末と週半ばに増加。特に興味深いのは、学校完全週五日制施行を境に土曜日に多かったのが金曜日にみられるようになった。季節変動では、身長は特に夏に伸びる傾向があり、体重は秋から冬に増加するので、夏の体重増加は不規則な変動であり、肥満につながることを示唆するのだという。

 さらに、この不規則な変動は、病気などのほか、いじめ、PTSD、父親のリストラ、深夜のアルバイト開始などでも生じ、グラフに現れてくる。

 異常の早期発見は、一人ひとりの測定値を「発育基準曲線上に測定値をプロットする」「体重差をとってグラフに表す」ことで手がかりとなる。それには最低でも年に4回測定を実施することが必要だが、グラフ化は時間がかかる。だが、これが学校でできるのは養護教諭だけだ。その一助にとエクセルソフトを開発、先月25日、全国養護教諭連絡協議会主催のシンポジウムでも紹介、現在もメールにて要望があれば送付している。(mk@niph.go.jp

 小林先生は、長崎での体験や自分の子育てなど、「これまでの経験が今に生きています」と、語る。

 この研究は、思春期まで継続使用できる茨城県常陸大宮市の母子健康手帳にも反映されている。


<プロフィール>
 小林正子  (こばやしまさこ)
 ・お茶の水女子大学理学部化学科卒業後、高校教員などを経て東京大学大学院教育研究科に進学。
  健康教育学を専攻し発育の研究を行う。博士課程終了後、同大学院兼教育学部助手として勤務。
  その後、国立公衆衛生院(現・国立保健医療科学院)に移り、母性保健室長、行動科学室長。
  発育の研究ほか、近年は生涯にわたる加齢の研究にも着手。
  教育学博士。



【2005年3月19日号】