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INTERVIEW 「人・仕事・人生」
駆けまわって、触れて、感じる
子どもを信じ、自主性を育もう
三鷹の森・ジブリ美術館館長
 宮崎吾朗さん
三鷹の森・ジブリ美術館館長 宮崎吾朗さん
 三鷹の森ジブリ美術館(正式名称・三鷹市立アニメーション美術館 日時指定・予約制)の特徴の一つは、「触れられる」こと。その中で、些細なことに驚いたり、走り回ったり、無条件で楽しんでいる小さな子ども達の姿を見ていると、昔の子どもと変わらないのではないかという印象が持てる。むしろ、気になるのは、「〜しなさい」「〜してはダメ」と子どもに言い聞かせている「大人」のほうだと、宮崎吾朗館長はいう。子ども達の感性で自由に遊んでもらいたいと「迷子になろうよ、いっしょに。」を掲げている館内でも、親は子どもにかかりっきりで、子どもの自主性を阻害しているのではないかと、感じる場面が少なくない。

 宮崎館長はまた、「子どもは何でも遊びにしてしまう才能があるのに、いまは指先で終わってしまいますから」と、体を使わなくてすんでしまう子ども達の成長を危惧する。美術館の若いスタッフを見ていても、理屈や理論は立派に口にするが、実際にやらせてみるとうまくいかないことがある。それは、実体験が少なく、頭ばかりの情報で身についていないからではないだろうかと。

 そういう宮崎館長、自身の子どもの頃は、よく「外で遊べ」と言われていたそうだ。「どちらかというと、家で物を作っているほうが好きでした」。それでも当時、住んでいた所沢の池でザリガニを釣ったり、雑木林で走り回っていたり、「あまり自分では買わなかった」ほどベーゴマやメンコに強かったり。

 美術館では昨年夏、三鷹市内の小学4年生を対象に館内での宿泊体験を行った。そのとき、子どもらしい「元気のよさ」に接することができ、今年も実施を検討中。そんな地域イベントのほかにも企画展示として、ロシアのアニメーション作家であるユーリー・ノルシュテイン氏の作品展、現在はアメリカのアニメーション・スタジオ「ピクサー展」を開催している。

 美術館は01年10月開館、準備期間に3年を費やしたが、館としてどういうことをやっていけばいいのか、それが見えてきたのは最近だという。「開館当初はジブリ作品の美術館という固定観念が強かったですが、これからは幅広く世界のアニメを紹介していきたい」と、期待を膨らませる宮崎館長はいま、3月の愛・地球博で「となりのトトロ」に出てくる家を展示するため、東京と名古屋の往復に忙しい毎日を送っている。


<プロフィール>
 宮崎吾朗  (みやざきごろう)
 ・1967年1月21日、東京都生まれ。
  89年、信州大学農学部森林工学科卒業後、(株)森緑地設計事務所に入社。
  建設コンサルタントとして、公園緑地や都市緑化などの計画・設計に従事。
  98年、(株)ムゼオ・ダルテ・ジブリの社長に就任。
  01年10月1日、財団法人徳間記念アニメーション文化財団の常務理事に就任。
  同時に三鷹の森ジブリ美術館の館長となる。




【2005年2月12日号】