連載:親子で楽しむ日々の新聞活用 72回

事実文と意見文を探そうー全国新聞教育研究協議会顧問・鈴木 伸男ー

記事内容で変わる文章の分類 「5W1H」は重要な助言者に

新聞の記事が「5W1H」に基づいて書かれることはよく知られています。これは「いつ=時(When)、どこで=場所(Where)、だれが=組織・人(Who)、なにを=目的・行為(What)、なぜ=原因・理由(Why)、どのように=様子・手段・方法など(How)」などの文章の基礎を指します。

新聞記者でありながら詩人・小説家としても活躍し、ノーベル文学賞を受賞したキップリングは次のような詩を残しています。

<わたしには、6人の正直な助言者がいる。助言者たちは、ニュースの全容を教えてくれる。「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」この6人が、わたしの助言者だ>(訳・鈴木伸男)

すべての記事に当てはまる訳ではありませんが「5W1H」は人に事実を伝える方法に悩んだ時、重要な助言者といえるでしょう。

5W1Hが一文に全てそろっているとは限りません。多くの記事は重要な部分(5W1H)を前におき、そのあとに補足説明を入れることで、前のほうだけ読めば大要が分かるようにされています。長い記事でも、短時間で読むことができるよう工夫されています。

記事の重要な部分を後半におく記事もみられます。多くの新聞が1面の下段に掲載している「コラム」には「どんでん返し」という手法がよく用いられていますが、この場合、最後まで読まないと筆者の一番伝えたいことは分かりません。

事件・事故などの事実、催しなどのいわゆる「事実のみ」を「客観的」に書く際に用いる文章を事実文と言います。「涙を流した」「ごはんを茶碗に二杯食べた」などの文章が事実文に当てはまりますが、イベント記事などによく見られます。

情報や知識を提供する記事にも事実文が多く使われています。映画案内やホール・博物館・美術館での催しの予定などが、特に夕刊によく掲載されています。朝刊の家庭面には熱中症対策や料理レシピなど生活に役立つ知識やマニュアル的な記事が目につきます。

一方で、社説・コラムやニュース解説などは、事実を取りあげ、自分の意見や考えを伝えるものです。ここでは「主観的」に、感じたことや思ったことなどが多く表現されています。「ご飯はおいしい」などもそうです。これを事実文に対して、意見文といいます。

一般紙では連載小説、俳句・短歌の投稿欄などの文芸も充実していますが、ニュース記事やコラムと比較すると、面白いかもしれません。まずは1面のコラムから事実文と意見文を抜き出し、分けてみましょう。

 

【2017年09月18日号】

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