〈インタビュー〉文部科学省初等中等教育局 児童生徒課長 坪田知広氏

学校図書館が変われば学校が変わる
―第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」を積極的に推進―

文部科学省初等中等教育局童生徒課s坪田知広課長
文科省初等中等教育局
児童生徒課
坪田知広課長

第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」(以下、第5次計画)が平成29年度から始まっている。これは「主体的・対話的で深い学び」を効果的に進める基盤としての役割を学校図書館に期待し、その整備を進めることをねらいとしている。文部科学省初等中等教育局児童生徒課・坪田知広課長は、第5次計画の積極的な推進を呼びかけている。

図書の整備と人の配置はリンク

――第5次計画の地方財政措置(表)で新たに盛り込まれた点は

まずは新聞の配置です。新規で高校に4紙を配置し、中学校等も2紙に増やしました。
学校司書については昨年度まで単年度の措置でしたが、計画的な配置の促進のため、5か年計画に新たに位置付けました。

――図書の購入費については、更新冊数分が大幅に増加しています

表

学校図書館図書標準を満たしているかどうかは、学校や地域によって差もあるようです。情報が古い図書は更新が必要であり、更新の必要性を見極めて図書を整備するためには、専門家が必要です。数を揃えるのではなく、その質も問われます。これらはすべて学校司書の配置とリンクしているのです。

学校司書が司書教諭と連携して蔵書の管理を行えば、授業で活用できる図書がきちんと学校図書館にあり、先生たちも活用しよう、となる。まずは学校司書の配置から始めることで、図書の整備も進むと考えます。

学校図書館整備の「目的」は全体の学校の教育力の向上です。次期学習指導要領が目指す様々な力を子供が身に付けるために、目指す授業の在り方がある。学校図書館が能動的に授業のやり方を打ち出し、教材準備の場としての機能を持ち、「主体的・対話的で深い学び」を進める基盤となるために、最大限に充実させていきます。

子供にとっても先生にとっても、新しい学びの刺激を生み出せる場にしてほしい。学校図書館が変われば学校が変わるのです。

学校図書館の充実・活性化を実現するために

――地方財政措置は各自治体で予算化する必要があります。どのように周知を図っていくのでしょうか

(公社)全国学校図書館協議会や(公財)文字・活字文化推進機構、出版関連各団体など、さまざまな団体と連携して、国民運動にしていきたいですね。学校図書館向けの本をたくさん発行する等、機運を高め、学校図書館の整備推進の浸透を図るよう、頑張る年になると思います。

――実現のためには首長の役割も重要です

まずは街づくりのリーダーである、自治体の首長に、地方創生として「読書推進で人を育てる」というビジョンを持って頂きたいのです。読書率が上がれば、市民が街づくりに参画する知見が増え、街全体の力になる。「学校図書館が充実することは街の活性化への近道」であり「学校図書館を活性化することは、学力向上にもつながる」と気付いてほしい。

教育の中身を変えることもスピードアップできるでしょう。何年もかかっていては、子供の時間感覚に合わない。先行する自治体のモデル例も参考になります。

学校図書館の整備は3年以内に成果を出さなければならないと思っています。PDCAを意識し、学期ごと、1年ごとにブラッシュアップできるはずです。予算化の状況も適宜検証します。図書標準も今度こそ100%達成したいですね。

――地域からの関心も高まって欲しいですね

学校評議員や学校運営協議会などの、地元の自治会長やPTAのアンケートなどの評価項目に、学校図書館についての質問も盛り込む流れになっています。

学校公開日などで開館することも、地域の人に学校図書館をアピールできる良い機会ではないでしょうか。地域の、より多くの人に関心を寄せてもらうことは、学校図書館活用充実のきっかけになるでしょう。

学校内外から色々な人が訪れるためには、常時開館も必要です。貸出冊数ではなく、利用者数を増やすことです。利用者数が増えることで、貸出冊数も伸びるからです。

利用するためには開館していなければなりませんし、そのためには常時人がいなければなりません。夏休みにも平日は毎日朝から夕方まで開館する、といった姿勢も大切です。

学校長が教職員の背中を押す

――学校長に期待することは

学校長のリーダーシップは重要です。校長会の会議や国の研修会などで積極的に話していきます。

昨年、文部科学省が「通知」(※)で示した「学校図書館ガイドライン」には「学校長を『学校図書館長』に」という記述があります。まずは名刺に刷ることから始めてみてはいかがでしょうか。'力を入れている'という姿勢を学校長が見せれば、先生、司書教諭、学校司書といった教職員全体がやる気になると思います。

加えて、司書教諭が教員全員とつながることの重要性は明らかです。
司書教諭もなるべくその活動に時間を割けるようにするなどの指導体制の充実が望まれます。

――教職員の連携が重要ですね

蔵書の更新や充実など、司書教諭と学校司書の連携だけでなく、色々な教科の先生の力が重要です。

子供の興味は科学や社会など多様ですから、学校司書は子供たちの学びを支えるために、幅広い分野で本を扱う必要があります。新聞やテレビなどで最新情報を得、教育委員会のアレンジで地元の大学などで研修を受けることが必要となってきます。

さらに、学校の先生方の力も借りなければなりません。例えば、蔵書の情報が最新かどうか。理科の先生が本を手にとり、冥王星が"準惑星"の記述になったかどうか気付く、といったことです。これらは授業で使っていればすぐに気付くことです。
学校図書館の活用がそこまでいっていない段階でも、各教科の先生が蔵書を見ることで気付くことができ、授業で使いたい本を先生自身がリクエストできます。

そのためにも学校長が先生方の背中を押す必要があるのです。首長、学校長といった方たちが、学校図書館の学ぶ景色を変えられるのではないでしょうか。

※平成28年11月29日付「学校図書館の整備充実について(通知)」。教育委員会、学校での取組、「学校図書館ガイドライン」「学校司書のモデルカリキュラム」を示している。

 

【2017年4月24日号】

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