学校給食・食育特集

学校給食の現場に安全な素材を紹介<フードシステムソリューション>

衛生・環境対策などをテーマに、多数の企業が食に関する展示を行うフードシステムソリューション(以下、F―SYS)が9月28日から30日まで東京ビッグサイトで開催された。第12回目を迎える今回は、展示規模を大幅に拡大し、230社が一堂に集結。3日間で7万2414人の食の関係者が来場した。また、展示とあわせて、食物アレルギーや衛生管理の専門家による講演も多数行われた。

F-SYS全景
食関係の企業ブースが多数並ぶ

F―SYSの企業ブースでは、ウィルス・アレルギー・異物混入対策、給食厨房の省スペース化や衛生面を強化する各種システムなど、より良い給食厨房環境を提案する多彩な製品が展示・紹介。時代のニーズに合わせた新しい提案も見られた。

アレルギー問題をまとめて対策
AiHo

アレルギー対応食用のシステム調理台「MKU」は、IHヒーター、器具消毒保管機などを1つのユニットに集めたシステム調理台だ。アレルギー対応食の調理、器具の洗浄・消毒保管までを一括で行うことができる。担当者は「今後も子供たちの安心安全な給食環境を提供し続けたい」と話した。

床を濡らさない吸水速乾エプロン
ワコウ

インナードライエプロンは、調理・洗浄などの作業中に発生する水分を吸収・速乾することで、ドライシステム環境に貢献。防水性を兼ね備えた材質で、快適な着心地が持続する。

オーダーメイドの「ゆるキャラ」食器
梅屋・台和

耐久性・耐熱性に優れた着色しにくい給食用食器やS、ランチボックスを展示。自治体や教育委員会の「ゆるキャラ」や市のシンボル等のイラスト入りオリジナル給食食器も特別注文で製作を請けている。「市の取組を広く周知できる」と好評だ。

バイオ技術で処分コスト削減
シンクピア

「運ばず、燃やさない生ごみ」処理ができる「業務用生ごみ処理機」を全国の給食センターや小中学校等に提案。シンクピアの生ごみ処分は、微生物を使ったバイオ技術で生ごみを生分解するというもの。処理後は分解水となって自動的に排水。回収・処理コストの削減が可能だ。

講 演 アレルギー対策給食

愛知文教女子短期大学 安藤京子教授

調理実習
調理実習でアレルゲンフリーの献立を多数紹介

校給食におけるアレルギー対応に関する講演では、愛知文教女子短期大学の安藤京子教授が「みんないっしょのアレルギー対応給食」というテーマで、献立作りにおける同校や地域の小学校の取組を紹介した。

「同じ物が食べられる」 食事制限からの解放

同校では、毎年栄養士科の学生が献立を考えたアレルゲンフリーのクリスマス料理を食物アレルギー(以下、アレルギー)の子供と家族に提供する企画「みんないっしょのクリスマス」を行っている。

学生の献立作りについて安藤教授は「除去という発想ではなく、その食品が存在しないと想定して献立を考えるよう指導している。アレルギーの有無に関わらず、一緒に食事を楽しめる献立が必要」と語る。

同校が考案したアレルゲンフリーの献立の調理も実演。マヨネーズの代わりにコーンデップを使用した「キューブサラダ」などが紹介された。

みんないっしょの学校給食を提供

アレルゲンフリーの給食を常時提供する保育所や小学校が増えている。

北海道千歳市の小学校は、和食中心、卵と牛乳は目で確認できる形で提供している。つなぎは卵ではなく、豆腐などを使用。和食を中心にしたことで除去対象の食物も減り、栄養バランスのとれた給食が実現した。安藤教授は「給食がみんなで同じ物を食べる場になって欲しい」と話した。

講 演 専門医のもとで診断を 混入事故を未然に防ぐ

昭和大学医学部 今井孝成講師

小児アレルギーを専門とする昭和大学医学部の今井孝成講師は、医療の観点から、年々増加するアレルギー児童に対する学校栄養士の取り組み方と、アレルギー食品の混入事故の予防法を紹介した。

医師による誤診が招くアレルギー診断

アレルギー検査には、特異的IgE検査という検査方法がある。よく使用される方法だが、医師によって診断が異なることもあるという。

例えば、鶏卵の項目のアレルギー数値がスコア3であった場合、アレルギーの対象食品を「鶏卵のみ」とする診断と「鶏卵、鶏肉」とする診断が出されることがある。

実際には「鶏卵のみ」が対象となるが、全ての医師が食品に精通しているわけではないため、アレルギーに関する誤診は多い。

「IgE検査は有用だが、決定的な診断をすることは出来ない。食物負荷試験により一つひとつの食品を個別に調べる必要がある」

しかし、かかりつけの医師への絶対的な信頼や、情報の不足から、負荷試験を受けずにアレルギー診断の結果を受け入れる保護者も少なくない。一つの食品であっても、子供の将来を考えれば、食べられるかどうかは重要な問題であり、正しい知識を持った専門医のもとでの診断が必要だ。

「栄養士が自信をもって負荷試験を進めてあげるべき。給食時の必要のない対応が減り、誤食事故も防ぐことができる」

混入事故を防ぐ給食時の対策

給食時における事故予防策として、今井講師は、完全除去か完全提供の2択に方針を統一する「作業工程の単純化」、「原因食物の可視化」、「動線を意識したメニュー作成」、「声出し・指さし確認」を提案した。

調理工程をイメージしながら、献立を考えることで、原因食物の使用のタイミングなどを把握できる。
各学校において、予防策と対応策を同時進行でまとめ、マニュアル化し、教員に周知させておくことが必要」と今井講師はまとめた。

 

【2016年10月17日号】

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