「いじめ」定義の解釈示す<いじめ防止対策協議会>

推進法施行3年で見直し

平成25年にいじめ防止対策推進法が施行され3年が経過したことを受け、6月22日に「いじめ防止対策協議会」が設置され、同30日には28年度第1回の会議が行われた。会議の設置を前に文部科学省ではヒアリングを全国で実施。それを踏まえて「いじめ」の定義の解釈について論点ペーパーが用意されたが、そこに書かれたいじめ、けんか、その他の事例を巡って各委員からは、事例があると教員は自校の児童・生徒に当てはめて考えてしまう、現実的ではないといった声もあがっており、今後の話し合いの争点となりそうだ。

今回の協議会は、いじめ防止対策推進法附則第2条において、「施行後3年を目途としてこの法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」とされていることから、今年度はいじめ防止対策全般について見直しの時期であるとして設置された。

国によるいじめ対策関連予算は年々拡充しており、平成28年度予算額は57億円(平成27年度49億円)。今年3月下旬から6月には、文部科学省が学校現場の教職員、教育委員会の担当者からヒアリングを行い、現行制度の課題を把握し、現場で困難が生じているケースなど6月以降の議論に活用できる情報を収集(ヒアリング内容については詳細4面)。

連絡協議会の設置は6月で全都道府県に

いじめ防止対策推進法第14条第1項では、「地方公共団体は、学校、教育委員会、児童相談所、法務局または地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができる」とされており、その設置率は平成27年10月時点で97・9%、今年6月には100%となった。
学校においては、今年3月31日時点ですべての学校で、「学校いじめ防止対策基本方針」を策定している。

H28年度の新規事業 各地の教委へ行政説明

いじめ問題に関する各種研修及び行政説明については、施行後「いじめの防止等に関する普及啓発会議」(平成22年から)、「いじめの問題に関する指導者養成研修」が行われており、平成28年度より新規で「いじめ問題に関する行政説明」として文科省の管理職レベルの職員が各地の教育委員会を訪問し、指導主事や校長等に説明。数年ですべての都道府県・指定都市教育委員会を訪問予定。

平成28年度は15都道県、5指定都市を訪問予定で、すでに徳島県、茨城県、沖縄県、秋田県、北海道、和歌山県、栃木県、福井県、青森県、愛知県、神奈川県、名古屋市、東京都、大阪市、長野県、仙台市で実施。

いじめの定義はすでに推進法に記載されているが、その解釈を示すことで、学校現場におけるいじめの成否に関する判断が的確に行われるようにする必要があると考えられていることから、同協議会での話し合いがもたれる。

座長の森田洋司氏(鳴門教育大学特任教授)は、「本会議の目的の一つはいじめの定義の解釈を明確に示すこと。学校現場で議論できる素材を文科省として明示すること」と話し、その解釈を基に各学校が校内研修で使用するなど、実践的に使える素材とするための会議が重ねられる。

 

【2016年7月18日号】

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