2016年は『学校図書館年』

学校図書年ポスター
全国の小・中・高校等に配布されるポスター

今夏、学校図書館に関連した2つの大会が日本で開催される。1つは世界各国から関係者や研究者が集う国際大会「2016IASL東京大会」。もう1つは「第40回全国学校図書館研究大会神戸大会」で、2年に1度開催される学校図書館の全国大会だ。この2つの大会が開催されることなどから今年は「学校図書館年」とされ、学校図書館の活性化が呼びかけられている。学校司書の配置を進めるなど、学校図書館の整備・活性化を図る神戸市の取組は、神戸大会で発表される予定だ。

2つの大会開催へ

国際大会と全国大会
東京・神戸で夏開催

国際学校図書館協会(IASL)が毎年各国の持ち回りで実施している国際大会は、8月22日から26日まで「2016国際学校図書館協会東京大会(2016IASL東京大会)」(主催=2016国際学校図書館協会東京大会組織委員会、共催=公社・全国学校図書館協議会、以下全国SLA)として、明治大学駿河台キャンパス(東京・千代田区)で開催される。

東京大会のテーマは「デジタル化時代の学校図書館(A School Library Built for the Digital Age)」。膨大な情報アクセスが可能となったデジタル化時代において、学校図書館はどのように再定義され、どのようなサービスが可能となるのか。世界の実践を紹介し、分科会のほか、学校図書館の視察等を行う。

IASLは、世界規模で学校図書館活動の促進を目指す国際機関。学校図書館と学校図書館専門職員に指針と助言を提供し、他の専門機関と協力して全ての国の学校図書館の発展を推進することを掲げている。国際大会では、世界各地から学校図書館・教育関係者、作家や研究者が一堂に集い、各国の研究や実践が発表され情報や経験が交流される(大会URL=iasl2016.org/ja/)。

「第40回 全国学校図書館研究大会神戸大会」は2016IASL東京大会と関連して、8月8日〜10日には神戸国際展示場、神戸学院大学ポートアイランドキャンパスで開催。主催は兵庫県教育委員会、神戸市教育委員会、全国SLA、兵庫県学校図書館協議会。

2つの大会が開催されることをはじめ、日本国内では、昨年「改正学校図書館法」が施行され、学校司書が法制化されたこと、学校図書館の重要性が認識されはじめたこと、諸外国からも日本の学校図書館への関心が高まっていることなどから、学校図書館議員連盟会長・河村建夫氏らにより、今年は「学校図書館年」とされた。より多くの人へ、学校図書館の意義や目的、活動等に理解を深め、学校図書館および学校教育の充実・発展を図るため、学校・団体・機関等との連携を図っていく。

神戸市学校司書
常勤で配置3年目

■初年度は環境整備

神戸市学校司書配置スケジュール
時期
(年/月)
新規配置校 配置校
総数
小学校 中学校 (計)
H26/10 20 10 (30) 小20、中10
H27/10 20 10 (30) 小40、中20
H28/4 4 1 (5) 小44、中20
義務教育学校
(中等部)1
H28/10 小中学校等
計25
小中学校等
計90
学校司書の配置は今後順次行い、市立の全小中学校配置する。なお、神戸市の市立学校数は小学校163、中学校81、義務教育学校1

改正学校図書館法が施行され、学校司書が法制化されたのは平成27年4月。今年全国大会が開催される兵庫県神戸市では、法制化に先立って26年10月から学校司書のモデル配置を開始した。

当初配置されたのは小学校20校、中学校10校の計30校。その後も順次配置校を増やし、28年4月には、小中学校合わせて65校まで拡大。今後全小中学校に配置する予定だ(※表参照)。

神戸市教育委員会生涯学習課の阪本和子氏によると「より資質の高い人材を求めるために、一度に多くの学校へ配置するのではなく、1年度に30校程度にし、順次増やしていくことで認知度を高めるように工夫している」という。

「学校の規模の大小に関わらず、1校につき1名の学校司書が常勤で配置されていることで、学校図書館や読書環境が大きく変わった」と話すのは、兵庫県学校図書館協議会副会長で神戸市立押部谷小学校の岡本玲校長。

最初に配置されたモデル校では、初年度の10月から3月の期間に、まず学校図書館の環境整備が進んだ。NDCに基づいた配架や背ラベルの仕様の統一など、児童生徒による自力での本選びに着目し、整備を進めた。

常に学校司書という人≠ェいるため、毎日開館が可能になったことで、小学校・中学校ともに大きな変化が現れた。まず児童生徒が学校図書館を頻繁に訪れ、図書資料の貸し出し数が各校とも大きく伸びた。

授業でも学校図書館が活用され始めた。小学校では、学校司書から担任への授業に関連した図書資料の提案や、公共図書館での団体貸出の手続きを学校司書が担うことで、学習で使う図書資料をヨえやすくなり、授業での活用が増えた。

中学校では国語等を切り口に授業での活用が増えたほか、小学校の司書教諭と学校司書を交え、調べ学習の本のリストの交換など、小中連携に取り組む例もみられた。

押部谷小学校では特に理科や社会の調べ学習などで学校図書館が役立った。「例えば5年生の社会科で、担任の『自動車を作る過程がわかる本が欲しい』というリクエストに応え、学校司書が早速その図書資料を準備した。授業の中で求められる図書資料について、学校司書から寄せられる情報も職員会議で取り上げられ、今後の選書にも結び付く」(岡本校長)。

■図書購入予算の工夫

配置2年目の平成27年度は、環境が整うことで各校で学校図書館オリエンテーションが実施されたり、授業に関する図書の準備など、授業支援に関する学校司書への依頼も増えた。教員の学校図書館に対する認識も広がりつつある。

新規配置校では前年度のモデル配置校の実践を参考に、配置直後から館内環境整備に取り組むほか、特に小学校では図書の準備や読みきかせ、ブックトークなどの授業づくりが活発になった。データの古い図書などの除架を進め、今後図書が不足している分野を補っていく予定だ。

図書資料購入のための予算については、学校司書配置後3か年は予算を加算して配分し、効率よく蔵書の整備を進める。

各校による「学校図書館活用実践報告集」は、同市のWeb(www.city.kobe.lg.jp/)で公開されている。

■「神戸モデル」作成へ

神戸市の学校図書館の取組は生涯学習課が担当しており、初等教育や中等教育を担当する部署等と密に連携を図ることで円滑に進められている。現在作成中の「学校図書館活用神戸モデル」も一緒に取り組んでいる。

「神戸モデル」には、小学校から中学校まで一貫して学校図書館を活用し、読書推進や情報活用能力を身につけていくための指針や、学校図書館活用の年間計画、学習単元の展開などの具体例などが盛り込まれる予定だ。教職員や児童生徒の学校の異動や転校があっても、その先の学校で同じように学校図書館を活用できる点も期待される。今年5月に小学校版の素案ができ、29年度には小・中学校版を完成させ、全市に普及していく考えだ。

8月の神戸大会では約100の分科会が実施される。兵庫県からは22の発表等を予定しており、学校司書と連携した授業づくりなどが紹介される。大会のテーマは「アクティブ・ラーニングを支える学校図書館の在り方」。岡本校長は「アクティブ・ラーニングを支える学校図書館として、授業づくりが今後さらに広がるはず」と話す。

 

【2016年4月25日号】

 

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