『福島県』の今 <相双エリア>

平成23年3月11日に発生した東日本大震災から5年が経過した。復興が進む一方で、東京電力福島第一原子力発電所事故に見舞われた福島県では、帰還困難区域がある「相双(相馬・双葉)エリア」など、復興に時間のかかる地域も残る。一方で昨年4月、「福島県立ふたば未来学園高等学校」が開校し、地域の希望と共に学校間交流の要となるなど、未来への期待も大きい。

震災を記憶に残し雇用創出で復興を
相双エリア

仏浜パトカー
避難誘導中に津波に流された仏浜のパトカーは保存へ
樽葉遠隔技術センター
樽葉遠隔技術センターでは原発停止措置に向けロボット研究が行われている

相双エリアとは、相馬市・南相馬市・広野町・J葉町・富岡町・川内村・大熊町・双葉町・浪江町・[尾村・新地町・飯舘村の2市7町3村。今回は沿岸地区を取材した。

被災のパトロールカー
震災遺産として保存へ

相双エリア南部の富岡町では、沿岸部の住民避難誘導中に津波に流された津波被災パトロールカーが、震災を伝える遺産として保存されている。発見されたパトカーは、2人の警察官の慰霊碑と共に仏浜に置かれ、津波が持つパワーと恐ろしさを今に伝えていた。

帰還困難区域の家や通りにはバリケードが置かれ、更地になった区画には小さな看板が立っていた。これは解体除染が終わった「印」。田畑の土は除染作業が進み、かなり整備されていた。

原発廃炉に向けて
ロボット開発が進む

富岡町のさらに南にあるJ葉町には、東京電力兜沒第一原子力発電所の廃止措置に向け、放射性廃棄物の処理・処分のための研究開発や試験を行う日本原子力研究開発機構の「J葉遠隔技術センター」がある。廃炉作業を円滑に行うには、ロボットを使った遠隔技術が不可欠であり、各種試験設備の整備、ロボットシミュレーターなどの研究開発が行われている。

雇用・生活の基盤作り
キーパーソンの登場

避難していた住民が、帰還する際に必要となるのは、生活基盤の確立だ。それに取り組む団体として「NPO法人JIN」がある。代表の川村博さんは南相馬市で平成25年4月から農業を本格的に開始。翌年には花卉栽培も始め、稼げる農業を実践している。花卉による営農を啓発し、枝物の産地化を目指す。今後は避難指示解除に合わせて浪江町内にサポートセンターを開設する予定。

NPO JIN農場
稼げる農業を目指す、NPO・JINの花栽培

ユニークな雇用創出を次々と生み出しているのは、鰹ャ高ワーカーズベース。同市小高区では高齢化が進み、地域活性化を図ることが難しい中、代表の和田智行さんは「帰還者のために100の課題から100の仕事を創出する。事業を始めると、課題やニーズが見えてくる」と話す。

飲食店や仮設スーパーなどをいち早く手がけ、新たにガラスのアクセサリーを製作・販売する「HARIOランプワークファクトリー小高」も運営し始めた。

 

【2016年4月25日号】

 

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